第108話 依存症者の告白(108)

 子どもの頃、父とプロ野球を観戦した。広島のある選手がバッターボックスに入った時、対戦チームの応援団が、「ゴリラ!ゴリラ!」とその選手をヤジり出した。観客たちも、そのリズムにのって、ゴリラゴリラとやり出した。私はその観客の中にいたけれど、いい気持ちではいられなかった。


 今も、野球やサッカー等で、その贔屓のチームに声援を送る人たちを見る。たまに、品のない中年男が、日頃の日常で溜まった鬱憤を「声援」に感情移入して、晴らしているように見えることもある。


 自分を憂鬱にさせる問題そのものと対座せず、何故、球場で声を張り上げているのかと思う。

 いや、あの熱狂的な応援をする人たちが、何がそこまで彼らを熱くさせているのかと思う。


 だが、私はパチンコ屋で、台に向かって日頃の鬱憤を晴らすべく、当たれ当たれと心の叫びを熱くあげていたのだ。

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