第98話 依存症者の告白(98)
わたしのどこが好きなの?って彼に聞いたら、「顔と身体」だって。
嬉しかったなあ! 心とか精神とか言われるより、ほんとに嬉しかった!
だって、手がつけられるもの。雲みたいなものじゃなく、この手で、ろくろで回せて、こねられるものだもの。
ぼくのどこが好き?って彼が聞くから、「ぜんぶ」って答えた。面倒じゃない、いちいち言うの。
そしたら彼、考え込んじゃった。どこからどこまでが、自分なのか、分かんなくなっちゃったみたい。
真面目なんだろうな。それで、「真面目なところ」って言ってみた。そしたら、つまんなくなっちゃった。
彼、一層まじめになろうとして、全然ヘンじゃなくなっちゃった。ちょっとヘンなところが、大好きだったのに。
コトバって、現実に体現できること以外は、まったく無意味だね。待ち合わせの時間とか、場所とか、そういうことを言う以外に、ほんとに意味ないんだね。
冗談が好きだな。冗談言って、笑わせて、わたしも笑うんだ。だって一緒に笑っていると、とっても気持ちがいいんだもん。冗談の他に、あんまり使いたくないな、言葉。
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