第85話 依存症者の告白(85)

 そもそも、私は作品をつくっていない。私は運命につくられたけれども、私が創作し、秩序立て、編み出した物語は何もない。


〈誰でも小説家になれます。自分のことを書けばいいんですから〉


 それは読み物にはなるけれど、小説ではない。また、作品とは、自分のことを書くのではなく、起承転結を考えて、創作された物語であるべきだと思う。私は、何一つ書けやしない…

 そこで、私が求めたのがモンテーニュだった。


 あの文体、形は読み易い。これなら書けると思った。内容は、ややこしいけれど。

 また、頭の中で旅をする際、椎名麟三の実直な姿勢、言葉に対する誠実さ、人生に対する真剣な視線・態度に同伴を願い、ともに辿りたいとしている。


 いつか心療内科に行った時、医者から「あなたは生きていくエネルギー、その貯めるエネルギーが、普通の人より少ないんです」と言われたが、私はそうは思っていない。(診察した医者は、とても普通の人だったと思う)


〈傍に誰もいなくても、助けてくれ!と叫ぶことができるのだ〉


 それが文学だと云った、椎名麟三の言葉を、信じたい。

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