第60話 依存症者の告白(60)
「大雨・洪水警報が発令されました。ご注意ください…」
町に、録音された声が響く。
為政者は、高台の頑丈な住居から下界を眺め、
(自然災害は仕方ない)
と考える。
「パチンコ依存症によるとみられる自殺者が、年間○○万人を越えました」
(勝手にやって、勝手に死んで、世話ないね)
パチンコをしない民は無関心。
他の理由による自殺者にも、交通事故にも、殺傷沙汰にも、基本的には「どうでもいい」。
(自分に降り掛かってこない災難は、災難じゃないからね)
しかし、
〈机の右端を叩けば、遠い左端に立ったものが倒れる。世界は、そういうふうに繋がっているのだ〉
眼に見えない、微かな震動を感じよう。想像から、思いを馳せよう。感じ、考え、感じ、考えを繰り返そう……たとえ形にならなくても、その震え、何かに繋がっていく。
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