第43話 依存症者の告白(43)

 淡い、ピンク色したネムの花が咲いている。コビトのつくった噴水みたいな細い花弁を、青い夏空に向けて…

 学校の校門の向こうには、サルスベリが。かえでの緑に隠れながら、赤く静かに咲いている。

 クスの木、夏みかん、夾竹桃。みんな、元気そうだ。

 鹿が、「おせんべい、下さい」と観光客にお辞儀をしている。


 動植物は、生きるために生きている。まるで大事な、生命だけのために生きている。


〈誰だい、人間が最も賢く、この地上を支配するだなんて言ったのは?〉


 あの葉っぱ達がいなかったら、生きても来れなかったくせに。

 木々なくして、人類最初のあのふたりは、リンゴさえ食えなかったくせに。


「今、働いてない人、多いんだってな。親の年金とかで、食ってるらしいよ」

「へえ」

 銭湯で、老人たちが喋っていた。


「親戚にいたなあ、親の遺した財産、ぜんぶ使っちゃったのが」

 親のスネをかじって、自己嫌悪になっていた時、友人が、私に笑いながら言っていた。


 私は歩く。パチンコ屋なんか行かない。

 あれはキキョウ、あれはコデマリ、あれはヒメシャラ、ナギ、トサミズキ……

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