第41話 依存症者の告白(41)

「あの世は、よっぽど居心地が良いんだろうなあ。一度行くと、二度と帰って来ないやろ」

 銭湯で、親しくなった老人が笑って言う。パチンコ屋は、あの世だろうか。


 完全完璧の人間はいない。いるとしたら、本人、相当つまらぬ人生を送っているのではないだろうか。

 ヒトは、少なくとも私は、苦しむために生きている。苦しまない時間はあっても、苦しむ時間の方が圧倒的に多い。苦しむ必要がないのに、自分からドツボにはまって行く癖がある。


〈地獄の方が、天国より面白そうだ。面白い人間が、いっぱい居そうじゃないか〉


 数学者の遠山啓は言った。そんな余裕のある心なら、苦しみも微笑ましい。


 考えてもみよう。かの遊技場は、1日12時間以上営業しているのだ。その時間の中で、大当たりが5回続いたとして、それがいかほどの時間で終わるか。

 たった数分のために、何万円も、何時間も費やすのは、もうやめようじゃないか。

 どうせ苦しむなら、それをやらない苦しみの方が、まだ、まだ、ましな苦しみじゃなかろうか。

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