第38話 依存症者の告白(38)

 この間、やはり何年振りかで訪ねに来てくれた友人のことも、忘れられない。

 彼は職場で非常に有能で、若いのに役職に就いた。だが、役職に就いた途端、それまで仲良かった人たちが「離れていきました」と言う。


 飲み会で、彼の隣りに座ろうとする人がいなくなり、それまで和気あいあいと一緒に現場で働いていた人たちが、そらぞらしい態度で彼に接するようになったという。


 あの人はエライ立場に立った→自分はぺーぺーだ→気軽につきあえない。

「意識」が、ヒトに与える影響は大きい。


 1週間、彼は会社を休んだ。そして、現場に戻して下さいと申し入れ、せっかくの役職から降りたのだった。だが、現場に戻ったら戻ったで、奇異な眼で周りから見られているという。


〈人間関係のねばりつき〉


「立場」とつきあうわけでないのに。「人」とつきあうはずだのに。


 そう思う私も、東大やら京大やらを卒業した友人と席を囲んでいる時、何か「スゲエ人たちとつきあっている!」と意識したものだ。「一流企業」に雇われた時は、何だか自分が誇らしく感じられたものだ…


 しかしほんとうは、そうではない。そうではないのだ。うわべで、人と人が繋がるわけがないのだ。


「パチンコばっかりしてるんですか?」

「はい、そうです」

 それで離れていった人は、今のところ、いない。ただ自分の意識が、自分はダメだと思わせている。

 現場に戻った彼に、「大丈夫ですよ。みんな、きっと背中を見ています」と言って励ました(?)ように、自分に対しても、大丈夫だよ、と声を掛けたい。

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