第37話 依存症者の告白(37)

 パチンコ屋で聞こえてきた、知らない人の声を思い出す。

 新装開店前の行列の中で、私の前にいた男が、連れの女性に言った、「ああ、わくわくする。今が、一番楽しい時かもしれん」


 閉店後、駐輪場で、若い男が友達らしき男に言った、「明日も来るの?」

 聞かれた彼、応えて曰く、「来るよ。明日負けたら自殺する」苦しそうに、笑いながら。


 もう10年以上も前になるが、思い出す。


 あの店の近くの国道、交差点の電柱には、〈パチンコ中毒〉と黒いスプレーで落書きがあった。

 住んでいたマンションの隣室からは、「パチンコばかりして!」と夫を怒鳴る嫁の声がした。


 その町は、パチンコ屋が多かった。

 私の職場の上司は、「家の目の前にあるんだよ。失敗だった」と言っていた。毎日「行ってしまう」らしい。


 家が近く、よく私を車で工場に送ってくれた友達は、その道中の車窓から、パチンコ屋が店外の電光掲示板に流す、

〈昨日の最高出玉…○×番台、5万何千発、スロット、何万枚…〉

 の表示を見て、それだけで満足するという。


「おお、出したなあ、って」と彼。

「やりたいと思わないの?」と私。

「思わないなあ。オレ、宝くじに当たっても、働くと思う。でないと、ダメな人間になっちゃいそうで」と笑って言う。


 その職場で知り合い、仲良くなったもう1人の友達と数年ぶりに会い、酒を酌み交わした時、

「無職ですか。よく持ちこたえてますねえ、ぼくだったら毎日パチンコして、ダメな人間になりそうです」

 笑って、そう言われた。

「うん、毎日してるんだけどね。ダメだから、オレ」笑って返す。そしてガロや慶次の話。


 正直で、まじめな人が、私の知り合いに多い。友達は少なくなったけれど、いい人たちと知己になれたと思う。

 類が友を呼ぶのなら、ヒトの性格・性質は、パチンコをやっていようがいまいが、関係ないのだと思いたい。

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