第29話 依存症者の告白(29)

 その日は新台入れ替えで、水着姿のような若い女が2人、飴やらウエットティッシュやらを客に配る、いわゆるイベントの日であった。

「北斗無双」のシマは、いつもそれなりに人で埋まっているのに、ほとんど空席状態。


 各台の表示データに、回転数600、900、1000などが並び、大当たり回数は0や1。16台中、そんな台がほとんどなのだった。私も、打ってみてすぐ分かった。液晶画面の動きが重く、鈍い。何か電磁が強い感じもした。ああ、店は今日、そういうつもりなのだ。


 ホール全体を見渡しても、出ているように見せかけている。だが、私はこの店を信じて(!)いた。

 出ていない時間帯はあっても、最終的には明日来る客に「昨日(つまり今日)やっぱよく出たじゃん」と思わせるために、大当たり回数のデータ表示だけでも帳尻を合わせてくるだろう、と。

 だが、その日はほんとうに、店が出さない気でいるのが分かった。


 客の1人が店員を呼んで、静かに文句を言っていた。「ほら、これでも外れるだろう?」と、強リーチが当たらないのを、店員に見せているようだった。その客も、「今日は裏操作で出さないんだろう」と感じているようだった。そして台のガラスをばんばん叩き、店を出て行った。


 あんなことされたら、客は離れて当然だ…


 地域のホールについての書き込みサイトを見れば、「あのジジイ、いつもいる」とか、「あの姉ちゃん、また出してた」とか書かれている。私のことは書かれていなかったが、何だかイヤな気分になる。


 店側がリアルタイムで、台に対して何らかの操作を加えるのは当然だと思う。昔のように「打ち止め」という上限がない。そして主権は、あくまでもその場を提供する店側にあるのだ。客は、その手の上でもぞもぞ蠢くコガネムシに過ぎない。


 それにしても、ひどすぎた。


 つくづく、しみじみ、これはあまりにも悪だ、いくら利益のためとはいえ、これは越えてはならないものを越えてしまっている。そう感じざるを得なかった。

 今までの自分の、こんな場所に貢いできた蓄積も、ひどい気持ちにさせるに充分すぎた。


 しかし、それでも、まだ弱い。まだ、パチンコをしたいと思う。何か、足りない…

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