第11話 依存症者の告白(11)

 以前働いていた鉄工所では、「パチンコでトラクターを買った」老人がいた。彼は、どんなに小さくても、勝っている時にやめていたという。

 印刷工場では、パチンコで稼いで生きてきた若者がいた。まだ「1発台」全盛の頃で、「これでずっと生活して行ける自信、ありました。でも、結婚して子どももできたし、チャンと働こうと思って」正社員になったという。

 自動車工場で知り合った若者は、「スロットにはまってたんですけど、このままじゃいけない、と。やりたくなったら、ジムに行くようにしました」と、しっかり自制心を働かせていた。


〈中庸を保つこと。中庸を保つこと〉


 それが、よき生き方であると賢者は言う。しかし私は、ゼロか百かという極端な性質を持っている。


〈業の深い人間であればあるほど、その解脱にぬかるまない喜びがある〉


 まったく、私の全身からパチンコの染みを綺麗さっぱり拭い切ることができたなら! この身体が、あれは前世の夢でした、と、笑ってあの場所を心から懐かしめることができるなら!

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