第10話 依存症者の告白(10)

 しかし、そんなに、希望がないのだろうか?

  パチンコ以外に、胸ときめく瞬間、生きている実感の訪れる瞬間、大好きなことをしている満足は、他の場所と時間にはあり得ないというのだろうか?

 ない。あれは、まったく独特の、絶望と期待の混濁する、紙一重の緊迫、運命の実在を目の当たりにできる場所はない。


 ああ、今日は出ない日だなと分かっても、自分に当たりが来ればその瞬間の快感も強度になる。このまま続けてしまおうかと思い、続ける。やはり出ない日だったと確認する。もう帰ろうと思っても、何か惜しい気がする。帰れない。

 勝った日は祝杯をあげ、負けた日は鬱憤のために飲む。とんとんの日は、何とも言えぬために飲む。寝ても覚めてもパチンコのことが頭から離れない。身体に、あの場所で過ごした時間が染み付いてしまっている。


 まだ保育園に入るか入らないかの子どもを家にひとり残し、打ちに行ったこともある。


〈バカは死ななきゃ治らない〉


 死にたくなるのは日常茶飯事だ。これだけパチンコに狂えるなら、そのために死んでも本望だ。しかし、それも刹那の気分で、まったく私は自分自身をアテにできない。もうやめよう、と、何度思っても、続けてきているし、何度死のうと思っても生きてきてしまった。

 このまま私が、パチンコのために生き、死んで行くとしても── そんな未来予想図から逃げるために、もうパチンコ屋に行きたくなっている。

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