第8話 依存症者の告白(8)

 大学生活を終えた後、私は定職に就かなかったが、建設関係のアルバイトで毎月25〜30万を稼いでいた。恋人ができ、結婚してからも、「残業で遅くなる」などと嘘をつき、順調にパチンコに金銭を費やしていた。

 だが、子どもができてからは、就職をしなければと思うようになった。「お父さん」はネクタイを締め、イヤな会社に毎日、顔を青白くして通うものだと信じていたからだ。


 スーパーの正社員で、家賃1万円の借し上げ住宅。定時で上がり、一家団欒の夕食、いってらっしゃい、いってきます、絵に描いたような盤石の日々に、一定期間はハマれる。そして飽きてしまう。

 あの、1秒1秒、その瞬間瞬間に生命を賭けて金銭を投げていた刹那の身震いに、そして当たった時の快感に、もう一度身を埋めたくなる。


 妻に、あまりのパチンコ狂いを咎められ、仕事を休んで家出する。2日間、カプセルホテルに泊まって、朝から晩まで打つ。ちょうど20万勝って、

「すみませんでした。でも、儲けてきました」

 家に帰り、謝りながら戦利金を渡す。


 綱渡りの道化師は、落下場合の安全網として親を頼っていた。父は一流会社に勤めていたし、実家は都内の一軒家。それなりの貯蓄がされていて当然だろう。もちろん、実際にスネをかじろうとはしなかった。しかし、気持ちの上で、すでに「いざとなったら親に」となっていた時点で、もうかじっていたも同然なのだった。

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