第4話 依存症者の告白(4)


〈ほんとうの目的を持たない魂は、偽りの場所にその熱を注ごうとする〉


 私にとってパチンコ屋は、現実から逃避するためで、それ以上のものではなかった。

 逃げて逃げて、逃げまくってやるつもりで、私はそこに入り浸った。「こんなことをしていてはいけない」という意識は、それを裏切ることで、克己した気にもなった。

 だが、いつまでも逃げられやしないことも分かっていた。だからこそ、逃げてやろうと、ますます躍起になることができた。


 ところで、何かにノメリ込み易い、医者に行けば「依存症」と診断されるだろう私は、そうなるべくしてなる、生来の性質があったように思える。

 たとえば性欲。小学2、3年で自慰行為を覚え、もちろん子種は出ないが、快感は得られていた。

 そしてその行為をするにあたり、どうしたわけか、必ず罪悪感も感じていたのである。私の場合、その代償は吐き気になって現われた。この苦しみは天罰だと思い、そのたびに、神様に「もう二度としません、どうか助けて下さい」と必死に祈った。


 また、幼少時に一度だけ万引きをしたことがある。お小遣いはあったし、万引きをする必要などどこにもなかったのに。

「悪いことをしている」意識、その行為の中には、どこか甘美な、他には見いだせない、魅惑的な何かがあったように思う。

 自慰行為も万引きも、そしてパチンコも、似ている気がしてならない。


 私は、パチンコをするような人間は、ダメだと思っていた。しかし、その場所にいることで、救われた気になったのも確かなのだった。


〈人間は、頭の中に飛び込んで自殺する〉


「おまえはダメな人間だ」と誰も言っていなかった。「パチンコ屋はダメ人間の吹き溜まり」と誰も言っていなかったのに。

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