第2話 依存症者の告白(2)

 私は、高校を中退する勇気がなかった。高校ぐらい卒業していないと、この社会で生きて行けないように思えたからだ。

 といって、毎日通う気も全くなかった。いじめだの体罰だの、何があったわけでもなく、ただ、学校が嫌いだったのだ。


 制服のない、公立の高校だったので、朝「行ってきます」と親に言い、飾り荷物を持って家を出る。学校と逆方向の電車に乗って、2駅目で降り、ドトールコーヒーで時間をつぶし、10時になるのを待った。

 開店の5分ほど前に行くと、4、50人もの行列ができている。灰色のオーラを帯びた中年の男達が多かったが、若いカップルや金髪のお姉さん、普通そうな若者、婦人、お爺さんお婆さんも並んでいる。


 私は、何となくその列に加わるのを恥ずかしく感じて、他人のふりして遠巻きに距離を置き、タバコを吸いながら夏の空を見ていた。大きな入道雲が、もくもくとビルの向こうから浮き上がっていたが、その左上に小さなはぐれ雲が、離れ小島のようにポツンといた。


(オレは、こんな所で何をしているんだろう。何のために生きているんだろう。一体、どうなってしまうんだろう)

 薄く涙ぐんでいると、店の自動ドアが開き、人々が吸い込まれて行くのが見えた。

「いらっしゃいませ!」店員の声が威勢良く聞こえる。開店時の店内には、景気のいい、F1レース番組のテーマソングが大音量で流れている。私はわざと遅れて、その中に吸い込まれた。


 さあ、どの台に座ろうか…


 そこは、夢の島のようだった。自分の選んだ台で、運命が決まる。

 当たらない台に座ったら地獄だが、天国だってある。すべては自分の選択判断で、どうにでもなるのだ。私は、自由を感じた。

 先日やった「ハネもの」コーナーに吸い寄せられる。

 当たらなければ、こんなことをしている自分への罰だ。当たったら、喜ぼう──

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