第24話ダンジョン9 ―第十二階層ー
俺達は砂漠の中を歩き続ける。
雲が全く無く憎らしいほどの青空、日陰のない砂漠、降り注ぐ陽によって生み出された熱は水分を奪い続ける。
喉が渇いた。
水、水、水がない。
前からブラックスコルピオンLv.20~30の集団がものすごい勢いで迫ってくる。
「キャー――ッ。」
ハリカの悲鳴が上がる。
「アスラン、倒しなさい。絶滅させなさい! Exterminate 'em! こっちに越させないでぇ!」
姫の無茶振りが飛ぶ。
「分かった任せろ・・・・って無理、絶対無理!!姫は?」
「私はGが苦手なのよ、いえ、あなたなら出来る。あなたしか出来ない。あなたになら任せられる。さぁ、お逝きなさい。」
「字が、字が間違ってるぞぉ! 俺は未だ死なないぞぉ!しかも、あれはGじゃないぞ!」
仕方がない。
俺は走った。全力で走る。
ブラックスコルピオンの集団目指して走る。
ブラックスコルピオンは巨大で長さが3メートルから5メートル位ありそうだ。
ハサミも巨大で50センチ以上もあり人間も挟めるだろう。
いつものように『聖剣モールキュラ―』を抜く。
するといつものように俺だけが時を味方につけ、時に嫌われたブラックスコルピオンはその速度を無くす。
ブラックスコルピオンの硬い外皮も『聖剣モールキュラ―』はまるでバターのように何ら抵抗を感じさせず切断する。
ブラックスコルピオンは緩慢に動きながらも攻撃してくる俺を囲い込む。
既に逃げる場所はない。
俺はブラックスコルピオンの下に潜り込み、下から頭部を突く、突く、突く。
ブラックスコルピオンは、自分の下を尻尾の毒針で攻撃することは出来ないようで毒針を避ける必要もない。
上空で爆発が起こる。
どうやら威力的に姫ではなくエイレムの魔法のようだ。
これがハリカの攻撃なら『俺を殺す気か!』と怒るのだが、エイレムだと『ありがとう』と言ってしまいそうだ。これが姫の攻撃なら既に死んでいるだろう。
爆発の衝撃波の広がりが見える。
ゆっくりと広がっていく。
俺のところに来る前に衝撃波から離れ別のブラックスコルピオンを攻撃する。
一匹に付き二、三撃で倒す。既に十数匹を倒しているだろう。
遅くなった時間が戻らない。
攻撃を続けている間遅いままのようだ。
気がつけば、全てのブラックスコルピオンが倒れていた。
全ての赤いバーが消え数字が出る。
『5:0:1039:0』
エイレムが5で俺が1039,戦っていない姫とハリカが0だ。
これで、これだけ倒したのだから当然レベルも上がっているはずだ。
「エイレム、どうだ、俺のレベルを調べてくれ。」
「はい、御主人様。本当に格好良かったですわ。惚れ直しました。今夜も・・・」
「エイレム、分かったから早く。」
「はい。え〰〰と、御主人様は・・・」
「なんだ?口籠るほど?そんなに驚くほど上がっているのか?まぁ、当然だな。で、俺はレベルいくつだ?」
「はい。御主人様はレベル1です。1のままです。」
「は?」
「だからレベル1ですわ。」
「たったのレベル1?あーはっはっは。」
「ハリカ、笑うな!レベル1?あれ程頑張ったのに依然としてレベル1?本当に?嘘ついてない?」
「はい、ワタクシは御主人様に嘘など付きませんわ。」
「アスラン、本当よ。あなたは未だレベル1。因みに私もレベル1。見かけ上はね。」
「見かけ?」
「そう、見かけだけだから。」
「俺は実際レベルが低くてもレベルが高く表示されてほしいぞ。逆は嫌だ。」
「御主人様は見栄っ張りだなぁ。」
「ハリカ、マイナス5ポイント!誰が見栄っ張りだ!」
「先を急ぎましょ。次は私も戦うから。」
次は姫が戦うらしい。珍しく・・
俺達は熱された砂の上を歩来続ける。
喉が渇く。
ごごごごごぉぉぉ・・・・・
「なんだ?」
突如、まるで地震の波が伝わってくる時のような低く不気味な音が当たり一面に鳴り響く。
次の瞬間立っている地面が消えた!
いや消えたように感じただけだ。砂に穴が開いていた。俺達は穴に落ちていた。姫を除いて。
姫は空中に浮かんだまま上から穴に落ちていく俺達を見下ろしていた。
「レイラァー、助けろ?」
レイラ姫は助けるのを諦めたのか一緒に穴に落ちてきた。
Zabbuunn!
下には水が溜まっていた。
俺達は水で助かった。まぁ、施設なので当然だが・・
俺達は皆水に濡れびしょ濡れになっていた。
姫を除いて。
姫は水に落ちること無く空中に浮かび水に浮かぶ俺達を笑いながら見下ろしていた。
「ぷっ・・よ、良かったわね。水があって。」
「笑わないで助けろ。」
「どうやって?」
「船持ってくるとか。ところで第九階層から落ちたんだからここは第十階層だよな?」
「そうだと思うけど。船ないわよ。ちょっと、何か見つけてくる。」
「レイラ、お前一人ずるいぞ。」
「アスランも飛べば良いんじゃないの?」
「人間が飛べるわけないぞ。」
「私飛んでるけど?アスランも飛べるはずよ。」
「え、じゃあ、ボクも飛べるんでしょうか?」
「ハリカには無理!」
「で、では、ワタクシは?」
「エイレムも無理ね。アスランだけよ。あっ!」
「ん?なんだ、どうした?」
「サメがこっちに来るわよ。」
「どうやってここで戦えって言うんだよ。」
「あれ?あれれれれっ。」
「どうした?」
「名前とレベル表示がない!」
「なんで?」
「多分、ここダンジョンじゃないわ!」
「じゃあ、どこだよ?」
「どこかの海よ。本当の海よ!」
「なに?」
「あの穴は転移罠だったんじゃないかな。ところで、サメをやっつけないと本当にサメのご飯になっちゃうわよ。早くやっつけなさい。」
「無理、この状態じゃ戦えない。し・死ぬぅ!」
〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰
「先輩、レイラ姫達いませんね?」
俺達はレイラ姫の後を追って砂漠を横断している。
フェムトを放つと連絡が取れずフェムトが戻れなくなるので放てない。
なので歩いて探している。
しかし、依然として見つからない。
「もう次の階層に行ったんだろ。」
「そうですね。では第十階層行きましょうか。」
俺達は第十階層に転移した。
第十階層、そこはジャングル。
マラリアを媒介しそうな蚊がいそうだが地下の施設だから勿論いない。
熱帯の気候も強烈な光と空調で管理されている。
因みに、ここの電力は月にある太陽光発電で賄えていて、この星事態には発電所はない。
ジャングルの中は木が生い茂り視認できない。フェムトで連絡も取れない。敵が攻めてきている時に連絡がつかなくなる重なる不運。
ん?
「先輩、可怪しくないですか?」
「何も可笑しいことなどないぞ。」
「じゃなくて、どうして敵が攻めてきている時に、フェムトで連絡が取れなくなったのでしょう。単なる偶然でしょうか?」
「ま、そんな事もあるだろう。」
「ここは、文明の発達してない世界だぞ。ただの偶然だ。このまま行けば姫たちがいるはずだ。早くレイラ姫を見つけないと、俺達が職を失うどころか、この国がなくなるぞ。」
「そうですよ、先輩。職を失うのは困りますよ。」
「それより、この国の人の命を心配しろよ、後輩くん。」
「ハハハハ・・」
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