第21話 ダンジョン6 ー 第七、八階層 ー
休憩を終えた俺達は先へと出発した。
岩だらけの第六階層を更に進む。
相変わらずレイラ姫は不満の表情で最後尾を大きな胸を揺らしながら付いてくる。
革の鎧でもなく唯のドレスなので揺れる揺れる。不満も揺れているようだ。
この点、エイレムの巨大な胸は柔らかく薄いとは言え皮の鎧に包まれており、揺れが少し制限されている。少し残念だ。
しかし、これだけ戦い、既に第六階層に居るというのに姫のドレスは全く汚れていない。にもかかわらず一番ポイントを稼いでいる。うーん、理不尽だ。
馬鹿なことを考えていると姫の鋭い視線で睨まれた。
恐い。
「矢が飛んでくるわよ!」
姫の鋭い怒声が飛ぶ。
矢が目の前まで来ると途端に世界が色褪せる。
色褪せた景色の中を色褪せた矢が緩慢な動きを見せる。
俺はその矢を色のついた剣で切る。切る。切る。
しかし、あまりに剣戟が鋭いのか矢は切られたことに気づかないかの如くその鏃が緩々と飛び続ける。
しまった!
「止まれ―!」
と叫んだが時すでに遅く鏃は俺の額を貫いた。
・・・・・・
・・・・・
・・ん?
いや、貫いていなかった。
その鏃は姫の剣によって止められていた。
「アスラン、しっかりしなさいよ。」
「あ、ありがと。助かったよ。愛してるぞ、レイラ。」
「(u_u*)ポッ、わ、わたしも・・(∀`*ゞ)テヘッ。」
姫が笑顔で後方へと戻って行った。どうやら機嫌が治ったようだ。
「くぅ〰〰〰!」
ん?エイレムが不機嫌になっている。
「御主人様、来たよぉー。」
ハリカは不機嫌になってない。ハリカはいい子だな、10ポイントあげるか。
やって来たのはミノタウロスLv.14、ミノタウロスLv.16、ミノタウロスLv.16の三匹だ。
突如、ミノタウロスの身体が切り刻まれ血を吹き出しながらばらばらになる。
姫の方を見ると笑顔で俺にうなずいていた。
赤いバーは消え直後数字が出てくる。
『0:46:0:0』
姫だけポイント獲得。
『泣いて土下座して謝罪して私に戦ってくれとお願いするまで手出ししない』と言っていた姫は、その下の根も乾かない内に手伝ってくれた。優しいのか気分次第なのか。
でも、手伝ってくれたのは嬉しいが俺達の訓練できないのだが・・
しかし、さすが姫、我儘気儘だ。自分勝手だ。くそっ、しかし、巨乳だから何も言えない。揺れる巨乳は正義だ。全ての正当化根拠足り得る。
揺れない巨乳はイミテーションだ。
な、なぜかハリカが俺を睨みつけている。
エスパーなのだろうか。
そんな事を考えながら歩いていると目の前に第七階層へと続く階段があった。もう?一回しか戦っていないが。敵が少ない。
階段を降り第七階層へと入る。
そこは、薄暗い世界。十字架が沢山立っている。その横には四角い石が積み上げられていて漢字が刻まれている物がたくさんある。
「げー、お墓じゃない。ゾンビとかスケルトンとか吸血鬼とか幽霊とかでてきそうね。」
「姫、ぞんびとかすけるとんとかってなんだ?」
「あー、気にしないで神の国の物語の登場人物よ。もしそうなら、聖なる光に弱いかもね。」
「聖なる光ですか。でしたらワタクシの出番ですわね。」
「おー、エイレムがやる気だ。」
「( ̄ ̄ ̄ ̄□ ̄ ̄ ̄ ̄)チッ、エイレム余計なことを・・」
「ハリカ、何か言ったか?」
「いえ、何も・・」
「ハリカ10ポ・・」
「ごめなさいもう言いませんから減らさないで!」
ガタッ!
「何?」
ガタ、ガタ、ガタ、ガタッ、ドドドドドドドドオ・・・・っ
「キャー―――ッ」
突如出没した沢山の骸骨、骸骨、骸骨、骸骨。
姫の悲鳴が鳴り響く。
名前はスケルトン。Lv.は14~20くらいまで様々。
『セイクリッドレイ!』
姫の声が響いた刹那、姫から光が骸骨共へと伸び、その聖なる光線が当たり一面を覆い尽くす。
世界は白一色へ変わり一切周りが見えなくなる。
目が慣れ光が収まり世界が暗黒へと変わる頃には骸骨共はいなくなっていた。
ただ数字が『0:229:0:0』
「どうやらこの階層のバケモノはいなくなったみたいよ。」
「いや、俺達の訓練は?」
「し、仕方ないでしょ。怖かったんだから。」
「姫、泣かなくても。よし、よし。」
「えへ、えへへへへっへ。」
姫に笑顔が戻り、更に機嫌が良くなったようだ。
結局俺達はその後一匹のバケモノを見ることもなく第八階層への階段に到達してしまった。
第八階層は海だった。向こう岸が見える。
岸に船が置いてある。
これで行けということだろう。
しかし
「姫、どうする。これじゃ向こう岸まで行けないぞ。」
「これはアトラクションみたいなものよ。」
「あとらんくしょん?」
「船は動かず周りが動いていく仕組みででしょ。乗れば分かるわよ。」
船は小型の船だが、細長い部屋くらいの広さがある。船に乗ると動き始めた。しかも波で船が揺れる。胸も揺れる。
どんな仕組みだ?
なかなか立つのも大変だ。これで戦うのは分が悪い。
しかし、訓練施設なのだから分が悪い場所で戦う訓練もあって然るべきと言えるだろう。
暫く行くと船と同じ位の大きさの足がた沢山あるくねくねした生き物がでてきた。
「タコね。タコ。タコ食べたぁ―い。たこ焼き食べたーい。」
姫がなにか言い始めた。あれは食べられるのだろうか。
「あれ食べるのか?」
「あれはホログラムだから食べられないでしょ。今度海行きましょう。そしたらタコが食べられるわよ。生でも美味しいし。焼いても美味しいわよ。」
「それがたこ焼きか?」
「それはただタコを焼いたやつよ。たこ焼きはもっと美味しいの。あ~涎が出る。ビールは?この世界ビールはないの?あっ、神様から貰ってくるわ。ちょっとごめん。」
そう言うと船の上から姫は消えてしまった。
――――――――――――――――――――
「田中さん、お疲れさまでした。時間ですので一度月基地に戻って帰宅します。」
「山岸さん、お疲れ様。初日は大変だったね。鈴木さんとお幸せにね。」
「もう、嫌ですよぉ。まだそんな関係じゃないですよ。」
「まだね、まだ。」
鈴木さんも帰ったし、山岸さんも帰ったし暇だな、今日はこの階層のホテルに泊まりだし。
「お疲れ様ぁー。」
突然レイラ姫が転移してきた。
「どうしたんですか?今何階層を攻略中ですか?」
「第八階層を攻略中よ。そしたら海じゃない。タコが出てきてさぁ。たこ焼き食べたくなっちゃった。無い?たこ焼きとビール。」
「冷凍のがありますよ。ビールもありますよ。」
「チンして。」
「少々お待ち下さい。料金は報酬から引きますので。ポイントからでも良いですよ。何ポイント貯まりました?」
「今、474ポイントね。」
「多分今現在レイラさんが一番ですよ。まぁ、当然といえば当然ですがね。チートですね。卑怯とも言いますね。」
「仕方ないでしょ、私のせいではないし。」
「出来ましたよ。はいこれビール。4本でいいですよね。」
「ありがと。じゃ行くわ。」
レイラ姫は慌ただしく消えていった。あ~、揺れる胸とくるくる銀髪が素敵だったな。ん〰〰、良い残り香だ。
――――――――――――――――――――
クソ、あの我儘姫、オクトパスLv.18と戦っている最中に『たこ焼き食べたい』とか言って消えやがって、何で消えることができるんだよ。どんな魔法だよ。
「エイレム、火は無駄だから雷魔法できるか?」
「はい、出来ますわ。『サンダーボルト』!」
エイレムの手から稲妻が出てオクトパスLv.18を直撃する。
オクトパスLv.18の動きが止まる。少し赤いバーが減る。
効いたようだ。
「よし、今だ。ハリカ攻撃だ。」
攻撃と言ってもオクトパスLv.18の本体は船から離れているので触手にしか攻撃できない。
オクトパスLv.18の本体に攻撃できるのは魔法か弓矢だけだ。
俺とハリカがタコの触手に攻撃しエイレムだけが本体に攻撃するがクールタイムが連続攻撃を不可能にしている。
くそっ、こんな時に行方不明になりやがって・・
「おまたせ。たこ焼き貰ってきたよ。食べようよ。ビールもあるよ。」
「まだ戦っている最中だよ。どこ行ってたんだ、この放浪娘。」
「冷めない内に食べようよ。まだ温かいよ。」
「煩い、こっちはまだ戦ってるんだ。剣じゃ攻撃が本体に届かないんだぞ。弓矢買ってくればよかったのに。」
「仕方ないわね。『ブリット』」
姫の指から細い光が飛び出しオクトパスLv.18の頭に当たる。
バンッ!
頭が吹き飛んだ。
赤いバーが消えた。
『4:12:2:2』との表示。
エイレムが4、姫が12、俺が2、ハリカが2だ。サボってたくせにまた姫が一番多い。くそっ。しかし、魔法が使えるエイレムが俺の倍か。やはり魔法が欲しいな。
「さ、これで食べれるでしょ。ほらたこ焼き食べるわよ。ビールもあるわよ。ハリカもエイレムも食べましょ。」
「これはうまいな。このかかっている黒いショーユとは違うな、これがうまいな、中にぷりぷりしたのが入ってるぞ。」
「そのぷりぷりしてるのがタコよ。黒いのはソース。醤油とは違うわよ。」
「この飲み物はエールとは違うみたいだな。」
「発酵方法が違うのよ、上面発酵がエールで、下面発酵がビールね。詳しいことは勿論知らないわよ。」
「このたこ焼き、ワタクシ初めて食べましたわ。また食べたいですわ。」
「この階層が終了したら五階層に戻りましょう。そこで食べられるわよ。」
「本当ですか。では今晩の晩御飯はたこ焼き食べましょうよ。」
「嫌よ、夕飯は普通の食べるわよ。って言うか好きなの食べればいいなじゃないの。」
食べているとオクトパスLv.20と21がでてきたが、姫が一瞬で黒焦げにして『これが本当のたこ焼きね。』とかいっていた。
その御蔭でゆっくり食べることが出来た。
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