第19話 ダンジョン4 ー 第五階層 ー
寒い。兎に角、寒い。早く第五階層に行きたいのにペンギンLv.5が沢山出てきた。
フェムト、何か適当な魔法はないの?
『はい、マスター。ではホーリーライト当たりどうでしょう。ゾンビではないのでそれ程効果が見込めませんが、逆にある程度の数が残りアスラン様たちも戦えてよいのではないでしょうか。』
そうね、じゃぁ。
『ホーリーライト!』
魔法名を告げると手からボール代の光の塊が飛び出した。
光の塊はかなり速い速度で移動しペンギンLv.5の集団の中程に着弾する。
光は増加しゆっくりと辺りを埋め尽くす。
いや、光が緩慢に増加しているのではなく私の攻撃であるために時間が緩慢に経過しているだけだ。秒速30万キロの光の進行は流石に見れないが・・
殆どのペンギンLv.5が死に絶え、残り十数匹。
後は、三人で倒すだろう。
階段を探す。
見えない。
フェムト、階段を探して。
『承知いたしました。前方角にフェムトを飛ばし捜索します。今後、サーチと目的物を言ってもらえれば即捜索を開始します。』
お願い。
階段が見つかったのは数分後だった。
戦闘もどうやら終わったみたいだ。
「もしかして、あの光の魔法はエイレムじゃなかったのか?」
「いいえ、ワタクシではありませんでしたわ。姫様が魔法を使われて一瞬で沢山のペンギンLv.5を屠りましたわね。」
「レイラ姫、君、魔法が使えたのか?」
「妾を何だと思ってるの?魔法くらい使えるわよ。」
「ギフトもないのに?」
「あなたもその内使えるようになるわよ。」
「出口が向こうの方にあるみたい、行くわよ。」
「姫、どうして分かったんだ?」
「内緒。」
説明が面倒臭い。
階段を見つけて降りていく。
ここは寒いもう二度と来たくはない。
来る時は、ダウンジャケット着てスキーパンツでも履いてこないとスカートでは寒すぎる。やはり戦いにドレスで来るのは間違いだったわ。
第五階層の扉が開く。自動ドアだ。懐かしい。
中は暖かく冷え切って固まった体が解れていく。
断じて寒かったからであって戦わなかったからではない。
第五階層は狭くここは休憩エリアらしい。色々な出店があるようだ。
武器や防具を売る店もある。
ホテルもあるようだ。
宿ではなくホテルだ。
しっかりホテルと書いてある。
食堂。
カフェもある。
インフォメーションカウンターとの看板がある。
この世界でも英語の表記は格好良い。
インフォメーションカウンターへ行くと、もろ平たい日本人の顔をした女性が受付カウンターにいた。
「こんにちは。あなた日本人でしょ。今日は月基地から来たの?田中さんと鈴木さん元気?」
「え?え?え?」
頭の中で疑問符が渦巻いているようだ。
「どうしたの?」
するとその女性が小声で訊いて来た。
「なぜ色々知ってるんですか?」
「帰ってから田中さんか鈴木さんに聞いて。」
「田中さん来てますよ。」
「本当に?呼んで来て。」
「少々お待ちください。」
受付の女性は奥の扉を開け田中さんを連れてきた。
「あれ?レイラ王女?早速今日ミッション開始ですか。早いですね。」
「田中さん第四階層まででLv.15のシロクマ出てきたんだけど。30階層迄行ったらLv.いくつのヤツが出て来るの?うちのクランはアスランは良いとして、他の二人はレベルが12と14よ。死んじゃうんじゃない。」
「大丈夫ですよ。その時は三人に上で待っていてもらって一人で最下層まで行って下さい。」
「一人で行くのか。寂しいな。それ。」
「だったら三人を守りつつ30階層を目指して下さい。いくつのレベルのバケモノが出るかは行ってのお楽しみです。」
「そうか、めんどくさいな。転移で30階層迄行って倒してきても良い?」
「駄目ですよ。ルールは守りましょう。一階一階下って行ってください。」
「他の人が30階層まで直ぐに到達することはない?」
「簡単には到達できませんからレイラさんもそれ程焦らなくても大丈夫ですよ。」
「そうなんだ。それ、誰かが私が行く前に到達するってフラグ立ってない?」
「まぁ、その時はその時で、フェムト経由で連絡入れますから、その場合は転移でお願いします。」
「了解したわ。取り敢えず、のんびりポイント貯めながら全員で最下層目指しまーす。」
「Have a nice adventure!」
「Thank you, love you.」
「まじで?」
「挨拶よ。下にも休憩階層あるの?」
「次は、15階です。」
周りには既に十数組がこの階層に到達し、一時の休息を享受している。
まるで、以前の記憶にある遊園地のフードコートのようだ。
上でも下でも生死をかけた本物の戦いのような戦闘が行われているが、只のアトラクションであり実際には死ぬことのない唯のゲームだ、気楽に行けと知らしめているようだ。
遊園地と違うのはみんな鎧を着込んでいる。
革の鎧、鉄の鎧、爬虫類の革の鎧を着込んでいる人もいる。
右隣のアスランも、左隣のエイレムも、真正面のハリカもみんな皮の鎧を着込んでいる。
エイレムは剣を持っているが魔法使いだから胸当てや篭手も付けていない、艶艶した体型にぴったりフィットした革の鎧だ。艶光した胸の形が色気を醸し出している。それほど硬くないのだろう、動く度に揺れる胸は男どもの視線を惹きつけている。アスランは言わずもがなだ。
ハリカは茶色い篭手・胸当て・更には脛当てさえ付いている皮の鎧だ。胸当ては偽乳を押しつぶし、まっ平らに見える。背が低く子供っぽい体型なので男どもの視線を集めることは全くない。一部のマニアを除いて・・・
私だけドレス姿だ。実は白と黒のゴスロリファッションだ。一度着てみたかった。やっぱり、戦闘にはゴスロリファッションでしょ。こんな所でその格好?というギャップが良い。弱そうな姫様が、ただ見学に来ただけの姫様が、まさかこんなに強かった、なんて、なんてすごい魔法だ、こんなの初めてみたと言わせたい。
「姫、今の人、知り合いか。珍しい顔してたな。」
「そう、平たい顔族よ。」
「ホントか?そんな民族、どこに住んでるんだ?」
「あなたの知らないところよ。さぁ、お昼食べるわよ、食後にコーヒーね。」
「あ、俺聞こうと思ってたんだが、どうしてコーヒーって『神様の飲み物』っていうんだ?」
「それは神様が仕事する時、常に側に置いて飲みながら仕事してるからよ。」
「へぇー、神様も大変なんだな。」
「気楽なんじゃないの。」
「あってみたいな神様。」
「いつか分かるわよ。」
「??」
食堂に行くと何とメニューにカレーライスが!
この世界ではカレーライスは広まっていない。初めてだ。
「すいません。カレーライス辛口大盛りチーズのせで!」
「ここ、ココイチじゃありません。」
どうやら、この食堂の店員さんも日本人のようだ。
「何だよ、カレーライスって。」
「美味しいよ。食べてみれば。」
結局4人全員がカレーライスを注文することになった。
5分もしない内にカレーライスがテーブルに並べられた。
「だ、大丈夫なのか?食べられるのか?だって、下○した時の○ンコみたいじゃないか。」
「食べれば分かる。食べろ!つべこべ言うな。汚いなぁ。これから食べるのに。」
「ワタクシも食べたことありません。初めてです。」
「エイレム、ちょっと辛いけど美味しいよ。」
「ボク、遠慮します。」
「ハリカは食べなくていいよ。この美味しさを知ってもらわなくていいかな。」
「え”ー、じゃあ、食べますよぉ。」
(* ̄ ̄ ̄ ̄ー ̄ ̄ ̄ ̄)フッ.、ハリカは天の邪鬼だからこう言えば食べる。
「ん?何だ、辛いぞ。だがうまい。おー、こりゃ美味しいな。またここに来て食べたいぞ。」
「レトルトあるから家でも食べれるよ。」
「れとると?何それ?」
「袋よ、袋。」
「ワタクシも初めて食しましたが、辛さが美味しいですわ。もっと辛いほうが好きかも。」
「ボクは、美味しいけど、もう良いや。」
ハリカは少し性格が曲がっている。
食後、全員でカフェに移動した。
オープンカフェだ。
コーヒーを飲みながら寛ぐ。
前をいろんな格好をした年齢も様々なグループが色んな話をしながら前を通っていく。
この階層も天井は青空で空調も管理されていて心地よい風が吹いている。
目の前には噴水があり水を吹き出している。
ホログラムではなく実際に水が出ているようだ。
噴水の周りには池の淵に座っているグループも居る。
何故かギターを持ってきて引いているやつもいる。何しに来たんだか。
このままここで夕方まで寛いで夕ご飯にまたカレーが食べたい。
『今日は疲れた。ここから引き返すか。』
『私ももう無理。帰る。』
『第六階層へ行ったけど戻ってきたんだ。今日はここで宿泊するよ。明日も頑張る。ポイント貯めて景品もらうぞ。第六階層は二足歩行の牛がでたぞ、気を付けろよ。』
『何、あのカレーって食べ物?あれって下痢よねぇ。』
いろんな会話が聞こえてくる。
一つだけ有益な情報があった。次は牛らしい。
名前が思い出せない。
「店員さーん。」
「はい。何でしょう。」
「二足歩行の牛って名前何だっけ?」
「ミノタウロスですね。」
「そうそう、ミノタウロスだ。」
「よし、休憩終了だ。お前ら第六階層に行くぞ!」
「え〰、動きたくない。」
私は断じて抗議する。
「姫、何しに来たんだ。強くなれないぞ。」
「何?私と戦いたいの?」
「い、いえ、すみませんでした。」
「分かればいいのよ。でも、次にいかないとね。はぁー、寝たい。第七階層まで行って戻ってこない?」
「そうだな。よし。それで行こう。」
「じゃ、アスラン、ホテル予約してきて。」
「じゃぁ、ハリカ行って来い。」
「ボク?動きたくない。」
「ハリカマイナス5ポイント。」
「え〰〰っ!」
「では、ワタクシが行って参ります。」
「おっ、エイレム、ありがとう。愛してるぞ。」
「アスラン!愛してるのは私でしょ!」
「二人共愛してるぞ!」
「え〰ボクはぁ?」
「お前は脱退寸前だろう。」
「う”〰〰」
私達はダンジョン攻略に出発した。
――――――――――――――――――――
「田中、お疲れ。どうだ、俺の担当の第十五階層の休憩所まで誰か到達しそうか。」
ここはダンジョン第五階層の休憩所の事務所。今日から暫く俺はここの担当だ。
そこへ、月基地から先輩の鈴木さんがやって来た。
「あ、お疲れさまです、先輩。先頭はまだ第八階層ですね。」
「そうか、そろそろ言って準備するかな。」
「あー、今日は大丈夫だと思いますよ。多分明日か明後日じゃないでしょうか。」
「そうか、じゃあ今日は自宅に帰ろうかな。」
先輩と話していると、食堂担当の山岸さんが事務所に入ってきた。
「あっ、鈴木さん、もう来られてたんですか。レイラ姫来ましたよ。そう言えば第六階層がミノタウロスだと知ってましたよ。」
「本当か?だったらちょっと設定変えようかな。ふふふん、驚くぞ。」
「先輩、悪い顔してますよ。」
「当たり前だろ。俺の密かな楽しみを奪われたんだぞ。」
「鈴木さん、密かな楽しみって何だったんですか?」
「山岸さん、密かな楽しみは言ってしまったら密かなものではなくなるから言えないんだ。」
「田中さん、教えて下さいよぉ〰。」
「えー、仕方ないな。覗きだよ。」
「き、貴様ぁ〰、何でいうかなぁ。(山岸さんに、知られたら俺生きていけないよ)」
「え〰、鈴木さん、そんなことしてるんですかぁ?だったら私を覗いてくださいよぉ♡」
「えっ♡」
「(*´ェ`*)ポッ」
なんか、ここに春が来た二人がいるし・・ウザイ。
どっか行って欲しい。
まさか、二人で隣のホテルに行くなよ・・
「田中ぁ。」
「はい?」
「なんか言ったか?」
「嫌だなぁ、先輩。僕が何か言う訳ないじゃないですか。あっ、隣ホテルありますよ、どうですか?」
ボカッ!
「あ痛っ!なぜ殴るんですか?パワハラですよ。ゲスノートに名前書いときます。」
「田中、山岸さんが真っ赤になってるだろ!」
「良かったですね。僕にも誰か紹介して下さいよ。」
「じゃあ、田中さんには主任を紹介します。」
「主任?遠慮します。あ、先輩は先日主任の裸覗いてたよ。」
「えー、酷い。私との事は遊びだったのですね。」
「山岸さん、何もしてないでしょ。」
「そうでした。(∀`*ゞ)テヘッ」
あー、今日もこの星は平和だなぁー
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