第515話 弱いからこそ天井がない

 

 「ガシャァァァア!?」


 キングタナトスは体勢を立て直し、自分よりひと回りもふた回りも小さく弱い人間を見る。


 「…………」


 その弱い人間は先程とは違い、白いウサギの耳を生やし瞳孔の開ききった目はキングタナトスを本能的に萎縮させた。


 スッ__っとキングタナトスの視界からジュンパクが消える。


 「!?」


 「k.v.r.e」


 突如、真下に現れたジュンパクはキングタナトスの腹に1枚の魔皮紙を貼ってそこに拳を叩き込んだ。


 「ガ、シ、ァ」


 拳は安安とキングタナトスの腹を貫通しジュンパクの腕は内臓に入り、傷口から緑の血を浴びる。


 「b.v.k.r.t.x」


 自分でしか分からない言葉を呟き、腕を引っこ抜いた途端、キングタナトスの内部で激しい爆発が起こった。


 「ガシャァァァア!?ガゴガ!?ガガガガガガ!?」


 龍牙道場の究極奥義……【変わり身】を改良した物と【地獄蹴り】を独自で改造した技【地獄突き】……究極奥義を使えるだけでも並の努力では辿りつかない、それを改良して威力をあげるなど師範すら超えている。

 だがジュンパクはそれでも自分は弱いと言い、上を目指した。


 もっと威力を上げるために専用の転送魔皮紙を相手の体内に入れて発動させ、キングタナトスの体内に大量の大砲の弾を転送したのだ。


 そして【地獄突き】の後から来る衝撃で転送された大砲の弾が爆発していく。


 キングタナトスは目の前に見えるジュンパクを必死に追いかけて攻撃を開始する……いや、攻撃をしていると言うより暴れ回っていると言った方が良いだろう、苦痛のせいで先程の様な余裕はない。


 「o.c.t.f.j.m.g.t.w」


 暴れ回る先々で観客席から噴水の様に出てくるオイル。

 ジュンパクは最初の色んな属性の魔法で攻撃したとき、キングタナトスの少しの反応を見逃していなかった。


 それを踏まえての仕掛け。


 普段では火事を消すために使用される設置型噴水魔皮紙の供給元をオイルに変えているジュンパクのアイデア。


 「ガシャァァァア!!!!!」


 気がつけば暴れ回っているキングタナトスはオイルまみれになり、自分からコロシアム全体にオイルを塗ってしまっていた。


 「t.x.z.u.Feu」


 ジュンパクが1枚の魔皮紙をキングタナトスに貼り付け魔力を流す。


 「ガシャァァァア!?!?!?!??!?ガゴガガガガ!?」


 ジュンパクの使用した魔皮紙は【ファイアー】

 ただの初心者冒険者が使う魔皮紙だ。


 これは【炎弾】など魔法で作られた炎と違い、“魔皮紙が燃える着火源”

 

 


 偶然かそれともジュンパクの計算かジュンパクの導き出した答えはアンナと同じ“魔法による炎”ではなく、物理的な炎だった。


 「ガァァァァァア!?」


 キングタナトスを始め、辺り一面炎の渦に包まれた。

 

 「b.n.p.p.o.v」


 消えない火が身体に纏わりつきキングタナトスは転げ回っている。


 ジュンパクは空高く飛び、両手で釜を持って構え勢いよく隙だらけのキングタナトスに降下していき



 「o.o.f.e.e.l.g.t.x……【絶斬】」



 


 「ガッ!…………」





 「finir」




 何メートルもある頭がゆっくりと地面に落ち、勝敗が決した。

 





 


 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る