第486話 利用されていた


 そして____あの日……


 俺は次の魔王に対してみんなで作戦を立てていた時だ……


 「次の魔王はサジタリウスの称号を持つ__」


 それを言った瞬間、俺の目が焼けるように熱く疼き出した!


 「ぐ、ぁ!」


 「リュウトさん!?」


 「りゅうとっ!?どうしたの?」


 「ますたー?」


 「目が!」


 止まらない、焼けるような痛み。

 脂汗を出して息も苦しくなる……そしてこれ以上苦痛を味合わないために俺は俺の意思とは関係なく気絶した。

 


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 …………………ここは?


 水の中に居た……

 不思議と息は苦しくない。

 夢の中かと思ったが意識はハッキリある。


 身体が自由に動かず、勝手に動いた。


 外を見るとそこはどこか大きなお城の厨房……俺はそこに見覚えがあった。


 「(グリード城の……?)」


 俺はその中にある汚い水槽に入っていた。


 身体はドンドンと水槽を叩くが外にいるコック達は一心不乱に自分たちの料理を作っている。

 



 おかしい。





 明らかに異様だ。




 すると、厨房のドアが開かれて俺のよく知っている人物が現れた。



 『キャハッ♪みーんなよく働いてるわね』


 グリード女王『サクラ』

 俺たちに魔王の情報や勇者の支援をしてくれている人だ、だがいつもと雰囲気が違った。


 『ま、そう言っても今の私を認識してないんだろうけどね♪そういう呪いだし、何より今日は新しいアバレーの女王との挨拶だもん♪料理に集中してもらわないと』


 サクラ女王を見た俺の身体は激しく水槽を叩いて気付いて貰おうとする。

 それもあってか女王は此方に気付いて歩いて来た。


 『…………』


 気付いて貰えて安心したのか身体から緊張感が抜けたのを感じた……良かった……




 ____だが、次の女王の言葉で背筋が凍りつくことになる。












 


 『うん♪新鮮なまま美味しく食べれそうね』





 




 !?!?!?!?!?!?!?!?!?!?



 何を言ってるんだ………?


 食べる?



 『キャハッ♪そんな可愛い顔しても、もう遅いわよ……ナナちゃん♪』



 ……え?



 ナナ?



 水槽のガラスにうっすらと写る自分の顔は顔を真っ青にしたナナの姿だった。


 『え?今まで優しくしてたのにって?キャハハ!受けるー!そんなの逃げないようにするために決まってるじゃない?呪いをかければ早いかもしれないけどあんた達は魔神が作った魔族……かけた瞬間に爆発とかするかもしれないしね』


 なんだ?どうなってるんだ!?


 『まぁ本当はこんな予定なかったんだけど恨むならリュウト様を恨みなさい?あんな情報があったらそうするわよね?』


 俺?俺が一体何を……


 『と、言うわけで♪』


 気がつくと水槽の前には他の料理人達がユラユラと揺れながら此方を全員見ていた。


 『命に感謝をして……頂きます♪』


 次々と水槽の中に入ってくる人間の手。


 ナナは怯え、恐れ、必死になって水槽の中を泳いで逃げていたが……


 「っ!!!」


 1人に魚の尻尾を掴まれて動きが鈍くなった所を次々と掴まれて行く。


 『はーい、新しいベッドよ〜』


 水槽から強引に取り出され置かれた先は大きいまな板……



 やめろ……やめろ!


 『ほーら、暴れなーいの♪じゃ、最初は鱗取りからやっちゃって〜♪』



 やめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめて________









ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 それから調べ、城にナナが居ないことを知った。

 どこに行ったか聞いても誰も何も知らないと言う。

 

 …………アバレーの女王に聞くとあの日、不思議な味のする刺身がでたらしい。


 信じたくはなかったが、神の使徒の人達の協力で機密情報などを隠す部屋へ入ると__



 無残な姿にされたナナが保管されていた……



 










 俺は……騙されていたのだ、あの悪魔に……『女神』に!






 

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