第413話 どうやら気付かれてたみたい

《????の森》


 「どうじゃったなのじゃ?ワシの乗り心地は」


 「どうって言われても......」


 と言うかこの世界に来たばかりの頃は見るもの見るものに驚いていたが住んでいる内に慣れてきていた......はずだったが......いやぁ、どうにもこれは驚かない方がどうにかしてると思うよ。

 まさか、あの時一瞬見たドラゴンが人間の女になっていたなんて......。


 「最高だったのじゃろう?お?」


 そんな俺の気持ちを知らずに人間に戻ったルカがドヤ顔でドヤドヤしている。

 あーもう!なんか心の整理がつかにゃい!こう言うときはもうあれだな。


 「うん!ファーストクラスの飛行機くらい凄かったよ!」


 俺は超ニッコリしながらルカに答える。


 これぞ必殺、「考えても無駄な事は考えず全てを受け入れる脳」!

 うん、受け入れる方が楽だな、例えるなら朝仕事いきたくないと思いまくっても結局仕事には行かないとダメだからもういっそ何も考えず仕事に足を運んでるあんな感じ。


 「ファーストクラス?よくわからないのじゃがお主がスッキリしてそうなので良いのじゃ」


 うん、スッキリしたよ、クリスタルドラゴンはルカ。

 何もおかしなことはないね♪


 「ところで、本当にここであってるの?先にエスが来てるって言ったけど何と言うか何もないと言えば嘘になるけど」


 ルカから降りたところは全く何もない森の中。

 ちなみに降りるときはムラサメさんにお姫様抱っこされて空高くからパラシュートなしのダイブですよアナタ......まじ死ぬから、いや死ななかったんだけど精神的に死ぬし年甲斐もなく男らしくもなく「キャァァア」とか行っちゃったよ俺......そして、俺を抱っこしてた当の本人だが。


 「............と、尊い......です......ぞ......」


 着地して俺を下ろした後、やり遂げた様に膝から崩れ落ちて真っ白の灰の様になっていた。


 「大丈夫なのじゃ、ほれ」


 ルカの指差す方向には何もない。


 「?」


 「ここなのじゃここ」


 ルカはおもむろに何もない空間に手を突っ込むと途中から手が見えなくなり何かを引っ張った。

 なるほど、【迷彩テント】か……というかパーティーメンバーに目印を教えてないのにわかるわけないだろバカか。


 そのまま蜃気楼の様に出てきたテントからエスが出てきた。


 「ここら辺の魔物は狩っておいた、新種ばかりだがダイヤモンド級の強さしかない、俺たちなら余裕だろう」


 「うん、僕達なら余裕だね」


 はーい、全部受け入れ!俺はゴールド冒険者だけどダイヤモンド冒険者と実力おなーじー。

 なわけあるか!

 新種で?ダイヤモンド級?そんなもん町のギルドに報告すればめっちゃお金もらえるやん!鱗とかめっちゃ高値で取引されるよ!?倒してもらったら持って帰っていいかな……


 「さて、行くのじゃ」


 「うん」


 「行くですぞ」


 エスがテントを魔皮紙に戻したところを見てみんななぜか〝俺の後ろについた″


 「………………ん?」


 いやいやいやいや、違うでしょ?

 と思ってみんなの後ろに俺が行ったらみんなまた俺の後ろに付いた……いや、何これ○ラクエじゃないんだから。


 「あの、行かないの?」


 「?、行くのじゃ、その為に来たのじゃから」


 「待って、話が噛み合ってない、質問を変えよう……僕1番前?何も場所を知らされてないんだけど」


 「うむ、そうなのじゃ、ここらへんに次の魔族達が居るのは調べてあるのじゃこの先はお主に動いてもらうことになるのじゃ、古来より神のせいで【勇者】と【魔王】は互いに引かれ合う運命なのじゃから」


 「なるほど」


 それを先に言え、今のコントみたいな時間なんだったんだよ。


 「てっきり、知ってるものかと思ったのじゃが」


 「いや、知らなかったよ……てか、それだと普通にアバレー王国に居て良かったんじゃ?」


 「お主も言ってたのじゃ、今のアオイに【勇者】としての力はほとんどないのじゃ、だからここまで近付かないとダメってわけなのじゃ」


 「なるほどぉ」


 と言われても自由すぎてどこに向かえばいいのか……


 「よし、取り敢えず、こっちに行こう」


 俺は取り敢えず目の前向いてる方に真っ直ぐ行くことにした。

 もっとも行くと言っても道などなく日もささない森の中を歩いていくのだが、一応冒険者を職業としていたので何のその。


 だが一番の問題は


 「うぎぎ……」


 「無理するな」


 「わわ!ごめん、エス迷惑かけるね」


 俺が大きな木の根っこを掴んで三メートルほどの岩を登ろうとしたが全然上に行けなくてエスが俺を姫さま抱っこをしてあがってくれた。

 筋力の低下が1番生活に支障がでるなぁ、てかもう姫さま抱っこされても恥ずかしいも何も感じなくなってるわ。


 「エス殿!それは私めがやりますですぞ!」


 「お前がすると鼻血がアオイにつくだろ」


 「んななな!失礼な!このマスクは一定量の汗や鼻水の体液ならばすぐに浄化するシステムですぞ!」


 「許容量を超えているだろいつもアオイを守る為と言っては着替えている所を見ては仮面から鼻血がはみ出してるのはみんな知ってるぞ」


 「んな!?ですぞ!?」


 俺覗かれてたの!?い、いやまぁ……元は男だしぃ?なんというか、逆にごめんなさい。

 俺の思いとは裏腹に大量の冷や汗をかきながらムラサメさんは俺に謝ってくる。


 「ど、どうか!どうがお許しくだざいですぞ!守るため守る為でずぞ!」


 「う、うん、いいよ?守る為だもんね」


 「はぁ……アオイは甘い」


 エスにため息つかれながらもそのまま真っ直ぐ森の中を進んでいると。

 急に三人とも止まる。


 「ふむ……なのじゃ」


 「ですぞ」


 「どうやら、来たようだな」


 うん、みんな真顔だけど何かイベント起こるなら俺をおろして?


 そのまんま、みんなの見ている方向を見ると微かに人の居る気配がする……これも冒険者時代だとすぐにわかったのに……まったく。


 俺はお姫さま抱っこされながらも【獣人化】してネコミミをはやして尻尾は見えない様にする。

 こうすることで人間の時より色々強化されて感覚もするどくなるのだ。


 「人の足跡?みたいだね」


 「こんな所に人間がいるわけないのじゃ居るとしたら人間に近い形の……魔族なのじゃ」


 ルカとムラサメは戦闘態勢に入る。


 そして森から出てきたのは。

 少し凛々しい女の声の


 「我々に戦闘の意志はない、落ち着いてくれ」


 「獣……人?」


 「私はアバレー国出身の《アイ》と言うものだ、君達を我等の村に案内しに来た」


 メスライオンっぽい耳をはやしたライオン色の髪の筋肉質でお腹が妊娠してる様にぽっこりでた獣人の女性だった。


 


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