第394話 魔王メイト 本体

 「ヒロユキ殿......?」


 キールが目を離したのは数秒。

 わずかその間に黒いベルドリは消えていた......そう、消えたのだ。


 「!」


 最悪の事態がキールの頭をよぎりメイトを見るがまったくメイトの様子は変わらない......だが、キールの最悪の事態は予想を的中させていた。


 「何を確認している、確かに我は一度死んでいるぞ」


 先程まで聞いていた声がキールの上空から聞こえる......それはキールが今一番聞きたくない声だった。


 「馬鹿な......そんなはずは」


 キールが声の方向を見上げるとそこには他のアヌビス族と同じく黒い肌で黄金の鎧と黄金の槍を持ち犬の顔をしたアヌビス神の姿があった。


 「冥土の土産、と言ったな?持っていったので返しに来たぞ」


 「どういうことだ!ヒロユキ殿はどうした!」


 「ふん、良いだろう、騎士キールよ......お前が我に教えてくれたように丁重に教えてやろう」


 「くそ!」


 「その手には乗らんぞ」


 キールが咄嗟に出した短剣は強力な磁石がついてるかのように地面に引っ張られ落ちる。

 そして何よりキールが驚いたのは......


 「か、身体が......っ!」


 利かないはずの重力操作だった......だがキールの身体は短剣と同じように地面に引っ張られそのままうつ伏せになってしまったのだ!

 

 「さて、どこから話してほしいか?まずはお前が何故そのような無防備な状態になっているか、だ」


 「クッ......」


 「我がお前と戦っているとき、一度もお前は魔皮紙を使っていなかった......使っていたとしても我に見えないようにだろう」


 メイトは上空からゆっくりと降りて足を地面につく。


 「単にお前はその防御力と生成できる剣に頼っているだけかと思ったが最後の最後で我の見ている前で使ったな?」


 「それが何だと言うんだ」


 「ククッ......それをすると言うことはお前も可能性として警戒していたのだろう?我が今重力をかけているのはお前自信ではなく、お前が大量に持って隠している魔皮紙だ」


 「くそ!」


 そう、キールの【目撃護】は自分を対象とする場合は身に付けている鎧と自分の身体のみ......つまり魔皮紙は適応外なのだ、それを悟られないように立ち回ったのが逆に気付かれてしまった。


 「だが!そうだとすれば貴様のその能力にも穴があると言うこと!」


 キールはなんとか会話を伸ばしながら状況打破を考える。


 「フン、そこまでのネタバラシはするつもりはない、死んだ後、あの勇者とじっくり考えるんだな」


 「!?まさか!」


 「キール、お前が我と戦っている間、目線が常に我の後ろを見ていたぞ、察するにその力は対象を常に見ていないとダメなのだろう?なので我は一度魔眼の力を解きお前を油断させたのだ、ここまで言えば解るだろう?」


 「クソ!」


 「ククク......毒には驚かされたが結局それだけ......形勢逆転も無かったのだ」


 「(何か......何かないか!)」


 「焦っているな」


 「!?」


 「この身体は我の本体だ、先程の身体より何もかもが違う......お前の魂の動揺、動きが良く見えるぞ」


 「ぐ......この!」


 キールは力一杯地面に手を付き起き上がろうとするがまったく動かない。

 もしもこれが安物の鎧であれば魔皮紙の所だけ破れ解放されただろう......だが今回キールが着ているのはグリード王国の最高品の鎧でありどんなに力をかけても破れないのだ。


 「では、最後だ......お前を生き埋めにする」


 「!?」


 「どんなに、強くとも人間である以上栄養が必要だろう?覚悟が決まれば自分でその魔法を解き死ぬといい......少しの間であったが人間と久方ぶりに楽しい戦いをしたよ、さらばだ」


 魔王は再び目に紋章を浮かべアクションを起こそうとした................................................................................................だが、忘れてはならない







 「超級奥義!【零式拳砕】!」





 

 美しく高い女性の声がした瞬間、目にも止まらぬスピードで現れ魔王メイトを殴り飛ばしたのは仮面を付けた金髪のネコミミ獣人。







 「アオイさん!?」




 「キールさん!援護に来たよ!」






 

 



 もう一人の【勇者』が来た!






 

 

 

  

 

 


 


 

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