第346話 《モロシイタケ》ゲット

 「僕を女として見ないでください」  


 アオイは周りの雰囲気が悪くなるのを承知でその一言を放ったが。  

 しかし、  


 「あ、ご、ごめんッチュ、今後気を付けるッチュ」  


 返ってきた言葉は予想以上にあっさりしていた。  

 それもそのはずだ、冒険者という職業になる以上自分の強さを示すためになっている女の人達も少なくない、だから極力冒険者の女性に対して女性扱いしないのは暗黙の了解なのだが......チュー太郎達はアオイの女性すぎる女性らしさに引かれて本能的に女性扱いしてしまおうとしてしまってたのだ。


 「う、うん、えと!そういや、《モロシイタケ》ってどこにあるんですか?」


  色々言われるかと思ってたアオイは思ったより呆気な回答にびっくりして話題を変えた。


 「それはッチュねぇ、もう少し歩いたらわかるッチュ」


 そのまま特に会話もせずに20分ほど歩いていくと


 「ウッシ!居たウッシ!」  


 ウシ沢が遠くの沼を指差すとそこからカバの様な図体に猪の立派な二本の牙をはやした魔物が現れた。


 「あれはどこにでもいる【沼豚】だよね?」  

 アオイも冒険者になって何度か見たことある草食の魔物だ。  


 「そうっチュ、でもここら辺のあいつの主食はそれこそ《モロシイタケ》ッチュ、つまりあいつが居るところには周辺にはえてるはずッチュ」


 「なるほど、ちなみにだけど【沼豚】を狩ったりするんですか?」


 普通なら冒険者はその日の食料として草食の魔物を一匹は狩るのだが


 「(俺魔物が狩られる所見れないんだよな......)」


 アオイにとって目の前で魔物が狩られるのは今やトラウマになっていた。

 と言うのも、その感情さえ今まで喰われてきたのだが、今はどういうわけか全てアオイは感じるようになっていた。


 「あぁ......噂には聞いてるッチュ。とりあえず食材はまた君の見ていないところでとってくるっチュから噂の料理をおねがいするッチュ」


 「ごめんなさい」


 冒険者で魔物が倒せないなどなんで冒険者をしているのだ、となるかもしれないが......


 「(毎回これを言うとき心が痛むなぁ、でもこの職業しかやれないんだよぉ俺)」


 異世界に途中から来たアオイにとって他に職業はなかった。

 それに


 「(下手にアドベンチャー科を卒業したことになってるから他の職業より冒険者を進められるんだよなぁいつも)」


 ギルドカードを作るとき、なぜかモルノスクールを卒業していた事になっていたのだ。

 一体【誰がそんな事をしたのか、そのせいで必然的に冒険者になるしかなかった』。


 「いいっチュ、それにあいつはこっちが襲わない限りは襲ってこないッチュ、とりあえずこのエリア周辺をくまなくさがすっチュよー」  


 「はーい」  


 それぞれ沼を別れて探しだす。

 倒れた木やじめじめした所や岩の影になっているところ。

 そんな中、アオイは三人が此方をみてないのを確認して沼に手を突っ込む。


 「ほい、【武器召喚』」


 【糸』が見えないように地面を木の根の様に伸びていきここら辺10キロ圏内まで目的のものをサーチする。

 

 非常に地味だが、効率性はかなり良い。


 「なるほど、近くにあるな......でも......」


 アオイは《モロシイタケ》があるところを見るが【沼豚】が居る場所近くの倒れた木の中だった。

 入り口には【沼豚】は呑気に体の半身を沼に埋めて寝ている。


 「(あれが巣なのかな?だとしたら少しだけ貰うよ)」


 アオイの糸は【沼豚】の体内に入り込み【起きれないようにした』

 普通に歩いていってもいいのだが、他の三人に魔法の事を気付かれないように起こさないようにコソコソしてるフリをしてアオイはゆっくりと目的地まで歩いていく。


 「トラ!?」


 最初に気付いたのはトラ五郎で、他の三人も気付いたが大きな声をあげれない......


 アオイはもう既に【沼豚】の横まで来ていた、ここで誰かが起こすとアオイに被害が及ぶからだ。


 そのままアオイは膝をついて倒れてる木の中に入っていくと


 「お、やっぱり一杯はえてる♪」


 奥にギッシリと立派な《モロシイタケ》がはえていた。

 

 「てか、椎茸って言う名前なのに明らかに形とかは松茸なんだけどなぁ、この世界もと居た世界よりもなんか惜しいと言うかズレてるというか......」


 アオイはポケットからハンカチサイズの【転送魔皮紙】を取り出して《モロシイタケ》を慎重に抜いて拠点のテントまで送っていく。


 「えーっと、確か依頼数は......」


 【転送魔皮紙】と連動してもう一つの魔皮紙を見る、そこには今回の数と送った数が記されていた。


 ちなみにモロシイタケになんらかの不良があった場合は送ってもカンストされない。

 出来るだけ綺麗なものをとったつもりだったが


 「ありゃ、あと15個も足りない」


 今回は思ったよりも辛い判定のようだ。


 「となると依頼したのは貴族かなんかかな?そういやチュー太郎さんがプラチナにあがれるって言ってたっけ......これがもしかして理由?」


 依頼によっては同じものでも入るポイントが多くなってるものがある、様々な理由があるが主に


 ・貴族やお金持ちの依頼

 ・その場所に強い魔物が時期によっては生息していて取りづらいから


 とかである。


 「とりあえず外に出て知らせよう」


 木の中からアオイのお尻が出てアオイが出てくると泥まみれになっていた......さらにお腹や顔より胸が出ているので胸の先に泥がついていて先程まで「女として見るな」と言ってたアオイだがこればかりは胸に三人とも意識を一瞬とられた。


 「(コソーッとな)」


 そのままアオイは【起きることのない魔物』から離れ糸をコソッと回収してみんなの所にもどった。

 三人とも何か言いたげだがアオイは言われる前にこう言うときの上等文句を放った。


 「心配かけてごめんなさい、でもこの装備ってほとんど隠れることを意識してる魔法を組み込んだ装備だから大丈夫です」


 「それならそうと先に言うッチュ!」


 「えへへ、ごめんなさい、見せた方がはやいかなって」


 ちなみにそんな物はついておらずアオイのローブの下に着ているはそこら辺で安く売ってた私服だ。

 なのでブーツと手袋、そしてローブにしか魔法はついていないがそのどれもにそんなものはなかった。


 「それより結構ありましたよあの中、半分は取れました」


 「おお!ほんとだトラ!」


 「もう半分行ってるッチュ!早すぎだっチュ!」


 「噂はこれのことだったのか!」


 「アヤカシは狩れないけどこう言うのは得意なんですよ、まぁだからこそプラチナにあがれないんですけどハハ」


 それぞれがアオイの働きに驚愕し、そしてチュー太郎は何か考え付いたかのように手をポンとして


 「これならもしかしたら!あそこの《モロシイタケ》がとれるかも知れないッチュ!」


 「?、あそこ?」











 「巨大なアヤカシ......【沼大蛇】の巣ッチュ!」

 








 

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