第277話 お食事入る前
「『女神』ねぇ......」
《モルノ町》の近くにある山の中。
エンジュは仲間達と一緒に少し大きな結界を張ってそこを拠点にしていた。
現在、仲間達も増えて昔のように小規模ではなく、一つの組織と呼ばれるほどになっていた。
「姉御?どうしやした?」
つまらなさそうにナイフをくるくる回して呟くエンジュに部下は疑問を問いかける。
「あんた、『女神』をどうおもう?」
部下はそれを聞いて難しい顔をする。
『女神』それは人間の絶対悪だ、しかしエンジュの率いる組織がやっていることは【人拐い】【冒険者殺し】そして今はお金に困ることが無くなったのでしてないが【盗み】......やってることは決して良いことではない。
この組織事態が『女神』と言われても仕方ないだろう。
だが
「本当に存在してれば恐いんでしょうけどねぇ、どう思うと言われましても......どうしたんですか?姉御もしや最近神話でも気になってるんです?」
「そうなるねぇ......」
そう、『女神』も【神】も文字通り神話でしか出てこない。
しかし、現在この山で待機する様に命じてるのは『女神』だと言う。
「そんなことより見てくださいよ姉御!」
部下の一人はまだ血がかなりついている胴装備とギルドカードを持ってくる。
中身は捨てたか女装備なので使ってるのだろう。
「ほーう、やるねぇ、これでどこかの町に入れるねぇ」
基本この組織の人達はギルドカード登録を削除されている。
なので、冒険者を狩り、身ぐるみをはがしてそのギルドにその冒険者が亡くなったと判断される前に町で事を済ますのだ。
町の中ではなく外で行方不明なので大抵は魔物に襲われたことに偽装できる。
「ありがたやす!あねご!」
「最近じゃ肉や魚で華がない食事だったからねぇ、今度スイーツの材料でも大量に買うかしらねぇ」
「まじですかい!ありあたやす!」
「中身は?これが血だらけだから死んだのかねぇ?」
「へい、取り敢えずパーティーの男三人は殺して女は半殺しにして今は『アレ』を食べさせてやす」
部下がゲスな顔をして舌なめずりをする。
「『アレ』ねぇ......」
『アレ』......正式には《黒髑髏薔薇》の花びらなのだが。
数年前からアバレー王国で裏取引されている。
花びら一枚でかなりの額するのだが最近懐があたたかいので何枚か買った。
普通なら《黒髑髏薔薇》は周りの人の魔力を吸い成長していく。
そして熟すと花びらが枯れまた新しい花びらを産み出すのを繰り返す、枯れた花びらはそのまま地面に溶けて栄養となるのだが......
「へい、これを飲ませたらすぐに言うこと聞いてくれるようになりやした、今はげへへへへ」
なぜか、『アレ』の花びらは枯れずに、さらには濃縮された魔力が詰まっている。
それを人間が口にすると一気に魔力酔いを起こす。
そして過剰摂取すると脳が魔力で焼かれて考えることが一時的に困難になる。
「ふん、まぁほどほどにしときなよねぇ?在庫も少ないんだから」
「へい!」
「それにしても何もないねぇ」
エンジュが欠伸をすると一人の外に居た部下が汗をかきながら飛び込んで来た。
「姉御!み、見たこともない数の魔物が!魔物が!!!」
エンジュ達はこの日、今の本当の『仕事』がどれほど苦労することか知る......
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