第230話 頭担当!
「さぁ、準備できました、みなさんも場を離れて此方に向かってきてると思います」
ユキ達は山亀の進路の先にある砦の上に立っていた。
「あの亀って痛覚ってあるのかな?ミーが亀の立場なら手がボロボロで痛すぎてキレると思うけど」
「再生するからこそ、痛覚を切っているのかもしれませんね」
「はぁ、それにしても本当にうまくいくのかしら」
「上手くいかなかったら、その時はその時です」
ユキとジュンパク、そしてアンナは魔力が充填された【撃・山亀クラッシャー】のスイッチの前に立っている……ちなみに名前をつけたのはユキである。
先程よりはゆっくりだが山亀は一歩、また一歩と砦に迫ってきている。
「うわー、段々近づいていましたけどこの大きさは圧巻ですね」
ユキは特に今は何もしない、が。
絶対に成功させなければいけない重要な立ち位置だ。
「ミー……ちょっとプレッシャーで胸がはち切れそう」
「あんたが押すわけじゃないけどねって言いたいけど気持ちはわかるわ、私も実際目の前にあの巨体……いや、山を見て今すぐ逃げたい気持ちでいっぱいよ」
「しかし、ここでこれを成功させて時間を稼がなければ全て終わりです」
砦の高さは600メートル、横にはおよそ二キロ続いている、その余すことなく大きな複雑な魔方陣と魔皮紙がより密に計画されて貼り付けられている。
この魔方陣を完成させたのはジュンパク、オリバル、ユキで、1日でここまで出来たのはもはや世界初ではないだろうか。
「ほんと、まるで元からこの魔法を知っていたかの様ね、ユキ」
「ユキの姉貴は魔法の天才だからね!」
「そうです!私はお母さん譲りの天才なんです!」
「流石ユキ姉貴!」
えっへん、とユキはドヤってるところをジュンパクは、はやしたてる。
「さぁ!山亀の頭が入ってきましたね」
正面にみると山亀の大きなくちばしのついた頭が!高さはこの砦のてっぺんと同じくらいの位置だ。
「さぁ、チキンレース勝負です!」
一歩
また一歩
ユキ達の何倍もの大きさの顔が近づいてくる。
「「「……」」」
ユキの頬を水が伝う。
周りの雨は魔皮紙で防いでるのでこれはユキ自身が出した汗だ。
三人は山亀の顔を睨み付け。
ついにその時が来た!
「行きます!ポチッとな!」
ユキがスイッチを押すと、砦に描かれた魔方陣と貼り付けられた魔皮紙が全て光だし!
ガゴオオオオオオンという音ともに三本のとてつもなく大きな光の槍が砦から表れ回転しながら山亀の首元、右翼の首の間、左翼と首の間に刺さり風穴を開けながら山亀の体内に入っていく。
山亀もこれにはダメージがでかかったのか「ブオオオォォォオオオオオオオ」と低い、船の出発するときの音と似ている断末魔をあげながら後ろに下がろうとするが、槍には返しがついていて引けなくなり山亀は止まった。
「みなさん!成功です!これから山亀はみやさんの言った通りこのダメージを治すためにここで自己再生を始めると思います!」
{やるじゃねーか!ユキ!右翼組は全速力で世界樹に向かってる!}
「はい!クロエさんありがとうございます!」
{やりましたね!ユキさん!私たち左翼組も今撤退して向かってます!}
「はい!アカネさんも気を付けて!私達も向かいます!」
そしてユキはある通信用魔皮紙を取り出し最後の部隊に通信した。
{このダメージ量ならかなり自己再生に時間がかかるはず!私たちは計画通り世界樹で準備するので【ヒロイン救出作戦】!スタートです!}
これがユキの作戦。
この少人数で山亀の進行を一時的に止めると言う無理難題を達成して見せたのだ。
それはアバレー側にとってリュウトに出した仕事よりも大きな利益。
そしてこの隙はユキ達にとっても大事な隙になる。
{後は頼みましたよ!キールさん!エスさん!}
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます