第217話 キール!オリバル!クロエ!
「雨が降ってきたな」
リュウトはそう言って雨用の魔皮紙を取り出し魔力を流す。
この魔皮紙は魔力を流して体のどこかに貼り付けることで柔軟性の高い雨だけ通さない結界が張られる。
雨合羽見たいな物だと思うといい、便利が悪いところはこの状態で食べ物を食べると喉を通る前に勝手に口から吐き出されるようになってる。
「山亀のせいかもっ」
「ん?なんか関係あるのか?みや」
「山亀は乾燥を嫌うからっ、常に周りに雨を降らせてるっ、もしもこれが山亀のせいならかなり魔力を補給できてるっ」
キールはこの少女を不思議に思う。
なぜこの少女はそんなことを知っているのか。
「ふむ……みやさんは山亀に詳しいな?グリードにはそんな情報が無かった気がするが……」
しかし、アンナがすかさずフォローする。
「私の国、ミクラルではあったわよ、神話なんてその国によって違うもんでしょ?キール様」
「ここ最近神話の生物に負けず劣らずの生物がミクラルに出ていたと言う事を聞いた……改めて色んな資料を見て神話の生物を調べた方が良いのかもしれないな」
そのキールの少し後ろから付いて行ってるアカネ。
「私もリュウトさんに拾われてからまるで絵本の中に居るようです、まさに大冒険!って感じで!」
それぞれ足装備には高速移動出来るものを着けており、時速80キロ程で移動中だ。
この装備は踏み込むと魔方陣が展開され衝撃を吸収、そして風魔法の組み合わせで勢いよく前方に飛び、滞空中もスピードが落ちないように背中から押される様な魔方陣が発動する。
もちろん、体力面に関しては元々のポテンシャルに依存する。
「昔はどんな小さなことでもパーティーメンバーと必死にやっていたな、まさに大冒険だった」
「そういや、その話聞いてなかったな、キールさ__キールはどんなパーティーだった?」
まだ少しキールと呼ぶのにぎこちないのを聞きながらキールはフッと少し笑って昔話をするのだった。
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《龍牙道場》
「ぶぇっくしゅん!おーらいー殺すぞ!」
豪快なくしゃみをしたクロエの横で間一髪自分の【えにぎり】を守るオリバル。
「誰か噂してるんじゃないの……」
「あー、どうせキーさん辺りだろ」
「だろうね……」
「しかし聞いたかよオリバ、アオイの奴、ここ2日帰ってないらしいぜ?そろそろ救出にいってやるか」
「確かアオイが受けてるのは魔力枯渇する奴だっけ……」
「『黒髑髏薔薇』が大量にあるところだろ?あいつ魔力の才能もないから入った瞬間気絶したんじゃね?」
「それだったら起きた瞬間また吸われるな……」
「ま、起きないわなゲヘヘヘヘ」
「女っぽくない笑い方してる……」
「あ?殺すぞ?」
「はぁ……あそこは近づくだけで魔力が吸いとられるからみんな行きたがらないし俺達が行くか……」
「あいつはうちの道場で人気だしな、恩を売ってもいいだろ」
「素直じゃないなぁ……」
「殺すぞ」
2人で師匠のところへ行くといつものように変わらない表情だが、クロエ達には違って見えていた。
「師匠、顔色がすぐれないみたいですが」
「ふむ、クロエとオリバルか」
「どうかしましたか?」
「ワシのミスだ……」
「「?」」
「少し前からアオイが帰ってきていないのは知っておるな?」
「アイツはうちの道場でも人気だからな、そりゃ誰でも知ってんよ、だけどあの洞窟はウチで一番人気のない修行場所だ……下手すりゃあ助けに行った奴がやられるから俺たちが助けに行ってやろうって話よ」
それを聞いて師匠はクロエとオリバルを見る。
「ほう?お前達が?」
「そうだっつってんだろ、師匠……歳か?」
「ホッホッホ、そうか、確かにお前達なら問題ないだろう」
クロエ達には師匠が悩んでいる意味がよく分からなかった。
何故ならただ転移して洞窟の中のアオイを助け出せば良いだけなのだ、それは過去、アオイだけではなく他の門下生にもしている。
「何か裏があるな……」
少し察したオリバルがつぶやくと師匠は再び調子を取り戻す。
「うむ……実はアオイを転移させた場所が破壊されて救出に行くには外に出て目的地までいかなきゃならん」
「やっぱり……」
「んだよ、めんどくさー事になってんな」
「そこでお前達に試練を与える、外へ出て情報を集め、アオイを救出せよ」
「はぁ?救出せよって何も情報なしでか?どーしたらいーんだよ」
「それを言えば試練にならんじゃろ?アオイを助けれたなら免許皆伝である」
めんどくさそうに聞いていたクロエ達だが最後の“免許皆伝”という言葉を聞いて一変する。
「まじかよ!オリバ!聞いたか!行くぞ!」
「あぁ……」
こうしちゃいられないと、クロエとオリバルは急いで部屋を出て行った……
「クロエ、オリバル……この試練、そう簡単ではないぞ……」
最後の言葉は2人には届いていなかった。
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