第196話 ヒロユキパーティーの裏話!

 《時間は少しだけ戻る》 


 たまこはユキに呼び出されていた。


 「どうしたの~?こんな何もない所に呼び出して~」


 口調は緩やかだが、その目は警戒している。

 いくら助けたとはいえ、こんな所に呼び出すのは明らかに何か企んでいるのだろう。


 「秘密で呼び出してすいません、私を助けてくれてありがとうございます」


 「いいのよ~、話はそれだけ?」


 「ははは、そんなまさかですよ……【六英雄】のたまこさん」


 「…………どうして知ってるのかしら?医者達はうまく記憶を消したはずだけど~?」


 「もしかしたら助けられた人達が覚えてたとかですかね?」


 「そんな嘘が通じる相手と思ってるの~?」


 たまこは魔方陣を展開してユキに構える、しかしこの魔方陣は攻撃の為ではなく医者達にも使った記憶を消すオリジナル魔法。


 だが、ユキは動じずにたまこの出かたを待つ。


 「……」


 「……」


 たまこは構えたまま何もしない。


 「どうしました?使わないんですか?」


 「……」


 「私の身体を見ましたよね?アナタも私に聞きたいことがあるはずです」


 「そうね~……あなたの身体、複雑な魔法が絡み合い、繋ぎあって構成されてる……まるで一度身体が魔力になってまた構築されたみたい……察するに転移魔法と転送魔法を間違えたのかしら?どちらにしろ生きてるのが奇跡よ〜」


 「流石ですね、それでも私を治した……そして、気付いたのはそこだけじゃないですよね?」


 「……身体を治している時になぜかアナタの身体には“私が治療した痕跡”が残っていたわ」


 「……」


 「最初は私が記憶をいじられたのかと疑ったけどその疑いはあり得なかったわ〜…………だって、その怪我を治したのは“ごく最近”のだったから」


 「……」


 「こんな事、あり得ないけど身体を見る限りもしかしてアナタ____」


 「そこまでです、いつどこで誰が聞いてるか解りませんからね」


 「……」


 「………………たまこさんの予想は当たっています」


 「!?」


 たまこは予想はしていたが、まさか本当に当たっていると思っていなかったみたいだ。

 それもそうだ、そんな魔法が実在するならばこの世界は____


 「私の持っている情報を全てお話出来ませんが、これから先、私たちに付いてくれば私はうっかり情報を漏らすかもしれません」


 「……勧誘かしら~?情報を渡す代わりに私の力が欲しい~?でも残念ね~……私の力は冒険者のパーティー1つには余りある力なのよ、そこら辺のヒーラーを拾ってきた方が____」


 「あなたの想い人がこのままでは死ぬ、と言ってでもですか?」


 「____!」


 「取引です」


 「……」

 

 「……」


 

 2人は黙ってお互いの目を見つめる。


 そして____







 「いいわ~、取引成立よ〜」






 先に口を開いたのはたまこだった。


 


 たまこは展開していた魔法陣を解きユキに握手を求めた。



 「やった!これからよろしくお願いしますね!」



 ユキはたまこと握手する、その手は何もしていないのに手汗で湿っている。


 「では、ヒロユキさんをどこか美味しいお店に呼んで話しましょう!今は若者では“ピコナッツミルク”が人気らしいです!」




 こうしてユキは、たまこをパーティーに加えることに成功していたのだ。

 


 


 

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