第190話 最初の修行も出来ない!
《龍牙道場》
「__っ!」
今、なんか悪寒が……
「どうしたアオイ」
「い、いえ、なんでもありません」
どこかで俺がヒロイン枠になってる気がする……気のせいか、俺男だし……いや、身体は女だけど。
「では、今日も修行に励む様に」
「はい」
俺は息をするだけでその音が聞こえてくるほど周りが静かな泉の前に来ていた。
「ふぅ……」
師匠は他のことがあるのか戻って行き俺1人だけになる。
「……」
龍牙道場は修行で奥義を取ることになっており「下級」「中級」「上級」「超級」があって「超級」まで来ると師範に勝負を挑むことが出来る。
そして認められれば免許皆伝で、“何か”あるようだが……
その“何か”を考える前に俺は数日経っても下級の最初の奥義すら出来ない状況だった……いやいや!無理でしょ!考えてみ?車やバイクをブインブイン言わせてた世界から来た人間がさ!
昔から魔法を使えて尚且つ魔物のうろつく世界に最初から居た人間と同じ事が出来るわけないじゃん!
「はぁ……なんでアニメや漫画で異世界に転生とか転移した主人公達ってあんなに簡単に色々出来るの……」
俺はアニメや漫画の異世界主人公達と違って
100メートル走れば息切れするし。
1メートルの壁も手の力だけで登れない。
1メートルある地面の亀裂もジャンプで飛べない。
魔物が出れば恐怖でおしっこチビりそうになるし。
こけたら擦りむいて普通に痛いし!
女の子の日来るし!
あれれ~?おかしいぞぉ?異世界ってそこら辺都合上なんとかしてくれるんじゃないの!?
「だー!雑念が多い!こんなんも関係するかもしれないし!集中集中!」
ちなみに下級から中級になるには下級の奥義を5つ習得すれば良いのだが……
今やってるのは初歩も初歩らしい。
ちなみにスケジュールはこんな感じ__
壱の奥義【水歩】 身体の魔力をコントロールして水の上を歩け。
弐の奥義【空壁】 魔力を出し続けて迫り来る水を押し留め続けろ。
参の奥義【暖苦】 魔力をコントロールして体温調整し、極寒の山を登れ。
肆の奥義【寒苦】 魔力をコントロールして体温調整し、砂漠を横断しろ。
伍の奥義【断魔】 全快の魔力を出し己を枯渇させ魔力が無くなった状態で一時間耐えろ。
………………
………
……………説明アホか!
魔力って何だよ!まだ魔皮紙に魔力を流すか私生活の基礎の魔方陣を発動する事しか出来ないんだよ!?
いきなり魔力操れとか意味わかんないから!?的を撃ってから狙うんじゃ逆だろ!
ムリムリムリムリムリムリ無理!
「くそー!また雑念が!」
もう考えるな!出来ることはできる!そう思えば出来る!もっと熱くなれ!明鏡止水!
「…………」
俺は目を閉じて“俺は魔力を操ってる!”と自己暗示をかけながらゆっくり前に進む。
____ポチャ。
濡れた……ちべたい……
「はぁ……また失敗……」
正直、魔皮紙に魔力を通せるようになって俺にも魔力があるんだ!って確信を持ってて、最初この修行内容見た時、簡単に出来ると思ってたけどこんな序盤で躓くなんて……
「いや、躓いていたって表現するより○リオカートの最初のスタート失敗して永遠とくるくるなってる感じか」
…………
「うー!こんなもの泳げば良いじゃん!!!魔法なんて使わないでボートボート!もーう!!!」
そうは言ってもこの世界は鮫やワニより恐い生き物が多い。
ボートなんて簡単に砕かれるんだろうなぁ。
「そう解っててもここ数日、何も成果が出てないのは気が滅入るなぁ」
時間はたっぷりある。
だが逆を言うとこんな何もない場所に何時間もいるという地獄。
この気持ちが解らないなら今すぐ外に出て土手か湖に行って何もせず三時間以上居てみてください!(切実に)
「でも、やると決めたんだ!男なら決めた事は確実に遅くても何を周りに言われようとも一歩一歩進め!身体は女だけど!」
頬を叩いて気合いを入れ直す!
「諦めてたまるか!」
異世界に来たんならごちゃごちゃ言わずに適応していってやる!
それから今日も1日。
何も変化もせず過ぎていった。
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