第177話 助けて!!!!!!

 

 目を開いたらそこは地獄だった……


 部屋の床は真っ赤に血で染まり、その上に何個か銀のトレーが置いてある……


 「うっ……」


 その1つ1つに丁寧に盛り付けられた肉と部位の名前……その肉の正体は何かすぐに分かった。




 

 そして壁には血で書かれたハートマークの中に文字が……






 『貸し1つね☆』


 


 

 




 

 「うぷ……」


 悲惨な光景を見て麻痺していた嗅覚が戻り、一気に血生臭いのが鼻から脳に流れ込んできてその場で耐えれず吐き出した。


 「はぁはぁ……」


 だが、これで解った事……いや、確信に変わった事がある。


 俺の中には確実に『何か』がいる……



 「ユ、ユキちゃん……」


 そんな事よりユキちゃんだ!ユキちゃんは……居た!


 「ユキちゃん!ユキちゃん!」


 うつ伏せで血を流しながら倒れているユキちゃんを抱き抱え心臓の音を聞くと微かに聞こえてきた……まだ、まだ間に合う!


 「待ってて……必ず……必ず助けるから」


 俺はユキちゃんを近くにあった血だらけのボロ布奴隷服でユキちゃんを巻いて急いで外に飛び出した。


 __森の中。


 __洞窟の中り


 「誰か!誰か助けて!」


 必死に出血を押さえながら大声で叫ぶ。

 

 誰か!誰かいないのか!冒険者は!ギルドの人は!この際、人さらいでもいい!誰か!


 「はぁはぁ……」


 心臓が悲鳴をあげ、肺も筋肉もこれ以上は動くなと脳に訴えかける。

 

 とても異世界から来た勇者が走る速度や体力ではない。


 「くそ!どうして俺はアニメや漫画みたいに早く走れないんだ!くそ!くそくそ!」


 がむしゃらに……ただがむしゃらに走る。

 町までは長い、それまでにユキちゃんが……いや!間に合わせる!


 「男が弱音を吐くときは全て終わったときだ!まだ俺は終わっていない!」





 叫び叫び叫ぶ。




 洞窟に何が居るかも解らないところで叫んだら魔物が寄ってきて自分が襲われるだけなのは解っている。


 だが、叫べば冒険者が居たら気づいてもらえるはず!



 洞窟から反響して聞こえてくるのは高い自分の声…………そんな俺の声で寄ってきたのは……



 「ガルルルル……」


 「ひっ……黒い……狼……」


 迷路のような洞窟道を走り抜け、ひらけた場所に出ると、そこには真っ黒な毛の狼がいた。


 「ガルルルルル……」


 「っ……」


 相手を刺激しない様に俺は黙って狼を見ながらジリジリとゆっくり回り込みながらその場を逃げようとする。


 ____だが


 「ガゥ!」


 狼は吠えたあと猛スピードで飛びかかってきた!


 「ひっ!ユキちゃん!」


 俺はユキちゃんを守るように抱いて目を閉じ最後の最後に心のそこから助けを叫んだ!


 「誰か助けて!!!!!!」




 









 ガキンッ




 「ガゥ!?」








 「やっと、見つけました」





 「……え?」



 目を開けると、長い銀髪の騎士が左手に持っている盾で狼の一撃を止めていた!




 「あなたは!?」





 「私はグリード王国の代表騎士、キールと申します、女王様の命を受けアナタを探してました」








 

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