第103話 ユキちゃんの賭け!


 「……」


 黒騎士は無言で剣をユキに投げる。


 「おっと!」


 ユキは転移魔法で避け、飛ばされた剣はまたブーメランの様に黒騎士の手元に戻っていった。


 「その物理に反した動きどうなってるんですか、見た感じ魔法って訳じゃないですよね?」


 「……答える必要はない」


 「そうですか、では最後の質問しますね、あなたは誰ですか?」


 「……」


 「答えてくれませんか、じゃぁ__っ!」


 黒騎士はその場から一気に踏み込み無理やり火の中を通ってユキまで距離を詰めて来た!


 咄嗟に転移するがそれも予測され先に回り込まれている!

 

 「このっ!」


 ユキは苦し紛れに杖を降るが剣に弾かれのけぞってしまった!


 「(このままでは次の攻撃を防げな__)」


 だが、その明らかな自分で作った隙を追撃せず、黒騎士はそのまま距離をとった。


 「……」


 「おかしいですね、今のは手加減ですか?それとも余裕ですか?さっきの隙が解らないほどの腕ではないでしょう?」


 「……」


 「それとも私に情けをかけてるのですかね?どちらにしろ、少し試させていただきます」


 「!?」


 ユキは両手をあげた。


 「何のつもりだ?」


 「見ての通り……降参です、私は何も見ていませんし、あなたもあの人を殺した、それで手打ちしませんか?」



 これはユキの賭けだ。



 相手は見たこともない武器と鎧、先程の転移魔法の先を読んだバトルセンス。


 

 これ以上戦えばお互いに死闘を繰り広げるだろう。



 だが先程の隙を見逃した、それもワザと……



 「……」


 「……」


 そして決め手は殺気だ。


 先程のジュンパクを殺す時にはあった殺気が、どういうわけかヒロユキとユキに対してはまったくない様にユキには見えていた。


 ならば、敵意を無くし、相手にとって良い条件を掲示し、それでここを退いてもらう賭けにでた。


 ユキに冷や汗が出てくる____だがユキの賭けは成功した。





 「良いだろう」





 「ありがとうございます」




 そのまま黒騎士は両手に持っている短剣を消して海岸の方へ戻っていった。



 「ふぁー……助かったぁ、ヒロユキさんが来たらとりあえず撫でて貰いましょうかね」






 ユキはその場にぺたんと座り込み大人しくヒロユキが来るのを待つことにした。



 

 


 

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