第8話 親の敷いたレールの上を歩む人生なんてまっぴらだ。

「覚悟は決まった?」

 

 今日は寄り道せず、部活の時間が始まるとさっそく本題に入った。気を使ってくれたのか佐々木はおらず、今は冨樫と一対一の状態で向かい合っている。

 

 もったいぶらずに、俺は彼女の問いに答える。


「ああ。ただ、その前に一つだけ」


「彼女についてもっと詳しく知りたいって言うんだろう。もちろんだとも」


「いや、俺はお前らが推す藤林香織さんとやらと対面するつもりはない。もちろん取引の材料にするつもりもな」


 わははと冨樫は愉快そうに笑い、「それはまた親の敷いたレールを脱線するかのような大胆な提案だねー」


「俺が気にしてるのはそれだとお前らが困るんじゃないかってことだ」


「どうしてかな?」


「俺の取り越し苦労ならいいけど、佐々木が彼女の名前を出したのは可愛いからという理由だけじゃなくて、何かのっぴきならない理由があってのことだったんじゃないか、俺にはまったく想像もつかないが」


「なかなかの名探偵さんぶりだね。当たらずといえども遠からずと言ったところかな。私はいいと思うけど、それで」


「いいのか本当に? 後で文句つけても俺は一切責任を取らないぞ」


 さほど重要なことではないのか、あるいは佐々木の独り相撲で乗る気ではないのか、どうぞどうぞと冨樫は軽い調子で先を促した。


 それなら、好き放題やらせてもらおうと俺は尊大な態度で言った。


「今回問題になっているのは自分の欲望のために、誰かを犠牲にするという構図だろ。だったら話は簡単だ。最初と同じ方法を使えばいいんじゃないか?」


「と言いますと?」


「お前がデモンストレーションで見せたあの方法、あのやり方だよ。あれはお小遣いを貰えるという未来のイベントをなくして、無理やり今日に早めるというものだったろ。それと同じ要領で運命の出会いを早めちまうのさ」


 ほうほうと冨樫は感心したように頷いてみせる。


 俺はさらに続けた。「将来結婚する相手ならば、ずるしようが、自責の念に駆られる必要もないってわけだ。もちろん恋愛にはタイミングってものがあるから、上手くいく保証はどこにもないけど、必ずしも脈なしというわけでもないだろ? ここからさらに将来のデート権を代償に、お互いの仲を深めていけば、俺は将来勝ち取るはずだった幸せを何一つ失うことなく、青春を謳歌することが出来るって寸法だ」


「おー!」


 拍手喝采を浴びる。他人事だと思って楽しんでいるスタンスが若干気に食わないが、これは彼女の力があって初めて実現する計画なので不問とする。


「まあ、小学生が来たら今話した計画おじゃんになるわけだが。将来愛する予定だった人を身代わりにレイプまがいのようなことをするよりましだろ。なんて言ったって俺は、無類の年上好きだしな」


「愛する人の処女膜を守ることも出来て、君にとってはこれ以上ないまさに一石二鳥のアイディアというわけだ」


「分かってるじゃねえか」


「まあ、そんな人がいればの話だけどね」


「急なそもそも論やめい」

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