第4章 集団序列戦in無人島編最終日
◯特別ルール
第139話 エリア縮小
—1—
昨日までの雨が嘘のような晴天に恵まれた集団序列戦最終日。
西エリアの物資補給ポイントにテントを返却したオレはリュックからペットボトルを取り出し、水分を口に含んだ。
時刻は朝7時50分。
最終日の今日は2日目までとは違い、8時から12時までの4時間で決着が着く。
現在生存者は29人。
その内得点上位7人のGPSが序列戦開始の8時から起動することになっている。
GPSは教師も確認できるため、同じ場所に留まることは極力避けた方がいい。
オレは北エリアの最北部にいるという暗空の元に向かっていた。
幸い? なことに暗空もオレもGPSサーチの対象者に選ばれている。
得点を払わずともお互いの居場所が確認できるのはある意味都合がいい。
とはいえ、敵が多く寄ってきそうではあるが。
時折スマホに表示しているマップに目をやりながら着実に足を進める。
時間外の戦闘行為は認められていないため、襲撃される心配はない。
移動距離を稼ぎたいなら朝早くから行動を起こすに限る。
夜の森は何かと危険が伴うからな。
夜は大半の生徒が休息に時間を当てている。
オレも夜くらいはしっかり寝ておきたい派だ。
雨上がりの後の熱気が纏わりつくような不快な空気を感じながら無心で歩いていると、スマホに通知が入った。
【特別ルール:エリア縮小。午前10時から集団序列戦終了までの間、北エリア以外の立ち入りを禁止とする。10時以降に北エリア以外のエリアに残っていた生徒、また足を踏み入れた生徒を脱落とする】
「なるほど。こんなこともしてくるのか」
初日に鞘師先生がルールの追加を示唆する内容を口にしていたが最終日にぶつけてくるとはな。
まあ、人数の減少に合わせて戦闘可能エリアを縮小するのは妥当か。
学院側は生存者ボーナスを狙って戦闘を避けている生徒を嫌っているようにも見える。
GPSサーチで隠れている生徒を炙り出し、エリア縮小でプレイヤーの遭遇率を高める。全くよく考えられている。
最終日はかなり活発になりそうだ。
—2—
(こんなことが許されるのか?)
息を殺して茂みに身を潜めていた西城は恐怖で心拍数が上がっていた。
蜘蛛の巣に捕らえられた13人の生徒。
血を流し過ぎたのか半数は気を失っている。
「頼む。脱落でいいからもう下ろしてくれ」
「何でもするからお願い」
まだ意識がある男女が必死に頼み込むが、それを聞いた糸巻はつまらなさそうに鼻で笑う。
「何でもするか。お前が俺の役に立つとでも?」
「うっ、それは……」
糸巻の冷めた視線に少女が言葉を詰まらせる。
蜘蛛の巣に捕らえられた虫に自由が無いように糸巻の糸に捕らえられた生徒13人にも自由はない。
それは初期段階からわかっていた。
逃げようともがけばもがくほど、糸が体に食い込むのだ。
皮膚が切れ、場合によっては肉の内側にまでジリジリと食い込んでくる。
どういう原理かはわからないが恐らくそれが糸巻の異能力なのだろう。
一連の様子を茂みから見ていた西城は呼吸音さえ悟られまいと片手で口と鼻を塞いでいた。
そこに特別ルールを知らせる通知が入る。
慌ててポケットを押さえたことで出来る限り音を抑えたが糸巻の耳に届いたかどうかはわからない。
だが、同時に捕らえられている13人のスマホにも通知が入ったため、恐らく大丈夫そうだ。
「お膳立てはしてやったから後はわかってるよな感が強いな。言われなくても片方はもう潰したってば」
ボソボソと独り言を呟いた糸巻は右腕を天に伸ばし、糸を手繰り寄せるような仕草を見せた。
「!?」
次の瞬間、13人の生徒を拘束していた糸が糸巻の指先に高速で集約された。
その衝撃で生徒の体がズタズタに切り裂かれた。
例えるなら紙で指先を切るような感覚に近いだろう。
それが一瞬にして全身を駆け巡った。
目を疑うような光景に西城はその場で嘔吐した。
胃液が逆流して止まらない。
集団序列戦最終日開幕直後、糸巻は一気に13得点を獲得した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます