土と一緒に、静かに呼吸をするような。
- ★★★ Excellent!!!
- 夷也荊
震災後、レイヤーを持つ子供たちが現れた。レイヤーとは、視界の色がすべて淡く見える現象で、時には物の大きさまでも誤認することがある。主人公の少年もレイヤー持ちであったが、先生に師事し陶芸をしていた。そこに、もう一人のレイヤー持ちの少年が現れ、二人でr陶芸をすることとなる。土の練り方や釉薬のつけ方、窯の温度調整。その工程はまるで人生をなぞっていくようでもあった。
そして、レイヤーを研究している博士が現れ、レイヤーの消滅を予言する。レイヤーがない世界を知らない二人。そんな二人に、陶芸の先生は、二人だけで器を作ってみるように言って、出かけてしまう。
果たして、レイヤーは取れるのか?
取れたとして、その世界はどれほど鮮やかなのか。
二人で試行錯誤しながら作る器は、完成するのか?
そしてお互いの進路について考える時期が来て――。
とにかく陶芸の描写が、生き物のようで、繊細でした。拝読していると、土の匂いや質感、窯の温度や、釉薬をかける音までが脳に響いてくる気がしました。
二人の少年がお互いに刺激し合って、陶芸に向き合うさまが、タイプが違うが故に引き立って見えて、成長物語としても十分読みごたえがあります。さらに、レイヤーというアクセントが入ることによって、読み手が見えている世界よりも、実は違う世界が開けていると感じられました。眼福です。
是非、是非、御一読下さい!