31
「ねえ、琴葉の話も聞かせて。パン屋、一人で経営してるんだよね?」
「はい、一人です。」
「すごいな、大変だろう?」
「大変ですけど、楽しいですよ。」
琴葉は一人で【小さなパン屋minami】を経営している。
小さなお店で朝から晩まで一人きりなので、会社という組織に入っている雄大とはまるで違う働き方だ。
「ありがたいことに気に入ってくださる方がいて、それこそ常連さんですよね。近所のおばあちゃんとかお散歩がてらに寄ってくださったり。お子さんがminamiのパンが好きだからって、お母様が買いに来てくださったり。」
それに、と琴葉は付け足して雄大を見ると、うっすら頬を染めながらとびきりの笑顔を見せた。
「早瀬さんも来てくださいますし、毎日楽しいです。」
「俺も常連さん?」
「もちろんです!いつもありがとうございます。」
「琴葉の焼くパンは美味しいだけじゃなくて何だかあったかい気持ちになる。繊細なのに優しい。食べる人のことを考えて作られているんだなと感じるよ。」
雄大の言葉に、琴葉の瞳は揺れた。
自分が焼いているパンをそんな風に評価してもらったのは初めてで、これからもパンを焼き続けてもいいのだと認めてもらえた気がした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます