第六十一回 物語は書斎ではなく現場で起きている。


 ――そう、くどいようだけど念のため、今は僕の部屋で行われているわけではない。執筆するための物語は、もうすでに現場で行われ……ではなく、起きているのだ。


 まるで溢れ出る、

 それでいて、ダンスの現在進行形イングな事件のように……。



『バンプラ』


 もう少し鑑賞したかったけど限りある休日、僕たちは次なるアクションへと転じなければならない。物語は進む、『りかのじっけん』は始まったばかりなのだ。


『ルネッサンス千里せんり


 これより向かう場所。三人一緒だ。もちろん可奈かな千佳ちか、それに僕だ。


 夏休みらしくプール。お化け屋敷や各種の乗り物があるテーマパーク。おそらく千里の町では『太陽の塔』に並ぶほどの場所じゃないかな? と、以前、瑞希みずき先生が教えてくれた。……まあ、お得意な暗号込みだったけど。ならば、帰ったら颯爽たる報告だね。



 以前よりつくづく思うけど、

 それだけ暗号好きなら(しかも大体が方程式なので)、何で国語の先生なのだろう?


 算数……いやいや数学の先生でも罷り通りそうだけど、

 ……まあまあまあ、帰ったら質問込々だ。


『と、その前に』

 寄ってみたい所がある。ハッと『二人にも相談しなきゃ』と思うのも束の間、


「ねえねえ、海里マリン寄ろうよ」と、可奈が僕より先に切り出した。――と、いうよりも「そう思ってたんでしょ、梨花りか」と、僕に問う。何と、考えていることがわかるの? レベルだ。


「うん」……と、それが僕の返事だ。


 で、待ってましたとばかりに「異議なし」と、ニンマリする千佳。おおっ、これはもう暗黙の了解よりも、もっと清々しい夏空の阿吽の呼吸にも似ていた。



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