第三章 新企画は『りかのじっけん』

第五十六回 ……告白。


 来たるこの日。夕映えの空、あの伝説の大樹の下。高鳴る鼓動を感じつつも、僕はこの場で待つ。――正確に言うと、この場所は校舎によってコの字型に囲まれている中庭。



 あっ、その前にここは学園。


 まだ二十四日は終わっていない。賑わうグランド側で、ふるさと祭りは続いている。その模様を表現するなら学園祭かな? ドラマや漫画では見たことはあるけど、僕はまだ経験したことがない。……まあ、その賑やかな場所とは対照的に、ここは寂しいくらいに静かな場所。マリさんが教えてくれた伝説の場所。――学園の七不思議の一つ、


 告白の場所!

 かつてマリさんは、この場所で告白した。四年前の今日だ。


 ……同じだ。僕も舞台衣装から……なぜか浴衣。舞台が終わって着替える時、ニッコリではなくニンマリの可奈かな千佳ちかに着せられたのだ。元の僕の服は何処行ったのだろう?


 それよりも、

 ガサッと足音が聞こえる。近づいてくる。


 緊張? 期待? 怖い? 嬉しい? ハーフハーフな感情が入り混じって、

 胸が熱い! 吐息も混ざって大人の階段を上るような感じ?



梨花りかさん、待った?」

 と声が聞こえ、僕の場合は女の人。僕はこのヴォイスが大好きだ。


瑞希みずき先生!」……なのだ。僕が告白するお相手さん。この舞台が、いや、その前から僕は、この日がお越しになられるのを待っていた。紛れも、間違いもなくそうなのだ。


「どうしたの?」と、わわっ、顔近い。


「あのね、僕、……演劇部に入部します! これからも、よろしくお願いします!」


 な、何と。

 僕、『入部の決意』を告白しちゃった。――自分でもビックリだ。



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