第五十四回 始動! 梨花ステップ!


 ――何か必殺技みたいなネーミングだけど、語るべきことはチト違うの。



 楽しい日々、その刻は過ぎゆくのも早くて、まずはファンファーレが響く。四年前はクラッシク調だったけど、今回は軽快なポップ調が、この体育館の内に広がる。


 ……そう、カウントダウンの気配を消しつつも、ついに訪れた。

 僕、星野ほしの梨花りかの十三回目の誕生日。イコール! それは、本番を意味する。


 しかも、しかもだよ、……もう立っている。


 舞台の上! 流れる音楽、BGM担当は軽音部の四人!


 ――Drドラムス睦美むつみさん、Voヴォーカル奈々ななさん、Guギター八重やえさん、Baベース久徳きゅうとくさん。稽古の期間中、初めてこの舞台に立った日、泣きそうな僕のために演奏を披露してくれた、歌も披露してくれた。


 今も同じ舞台で、僕の、

 僕たちの背中を押してくれる。また僕の傍らにはマリさん、役名も同じマリさん。(本名は早坂はやさか海里かいりさんだけど)僕の、従姉いとこの役だ。そして可奈かなは、お友達。


 ……たとえこの劇が現代版の『走れメロス』になったとしても、僕と可奈はそれを演じきれるほどの無二の親友――そんな設定だ。この広い舞台、されども舞台狭ぶたいせましと舞いゆく中で、僕たちが演じるのは朝倉あさくら希海のぞみ・著の『また家族と一緒に』だけど、……あくまで僕の『ザ・脚本』が基になる。かつてのマリさんが、そうしたように……。


 僕が信念をもって決めたタイトル、

 青春の一ページと定めたタイトル、それは、


 ――『令和元年八月二十四日、この場所で僕たちはまた会えた!』だ。


 全部を見るマリさんと同じ大先輩の川合かわい未来みらいさん。海斗かいと部長の頼りになる兄貴。


 それに負けず劣らずの思いが溢れ海斗部長、僕の従兄いとこ役に燃える。……どうやら四年前と同じ役、実の関係と同じくマリさんの弟を演じている?


 演技ではなく本気の部分もあるが……。未来さんは、いやいや未来さんも同じだ。マリさんの、それは……恋人役。



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