第三十八回 先生不在!


 ――でも、演劇部は今日も活動する。


 思いっ切り泣いたから、もうお空は晴れ晴れ。初めて見た先生のお子様『楓太そうた君』のように元気溌剌。いずれも昨日と比較した結果で、今日は爽やかデーだ。……先生とは瑞希みずき先生のこと。今日は検察庁へ行くために不在だ。



 お話を続けると、

 八月に入って五日目。迫る二十四日の『ふるさと祭り』のイベント。『ザ・脚本』も編集を終えている……とのこと。僕はマリさんに、そのことのお礼を兼ねた報告で昨日、彼女のアルバイト先であるあの店を訪れた。お茶も兼ねて……そのはずだった。


 可奈かなと一緒に共々、またお世話になる。

 演劇部の部長、早坂はやさか海斗かいとさんの双子のお姉様。――早坂海里かいりさん。やっぱり『海里』さんと呼ぶよりも、『マリ』さんの方が呼び易い。例えるなら、川合かわい未来みらいさんが、瑞希先生のことを『ミズッチ』って呼ぶように……あらら? 奇遇ね、昨日の星野ほしの刑事さんも『ミズッチ』って呼んでいた。……まあままあ、つまり親しみを込める意味でNNニックネームの方が呼び易いってこと。でも僕は、瑞希先生のことを『ミズッチ』とはよう呼ばない。


 僕にとっての瑞希先生は、

 ――五十五色の色彩を持つエッセイのスペシャリスト、『Mさん』だから。



 ああっ、前置き長くてすみませんでした。


 次回で三クールを終える『りかのじかん』……ゆえに、そろそろ演劇部も稽古に入らないと、みんなのお盆のことを考えると、もう日は残り少ないのだ。


 その思いに立って、

 四年越しの『あの感動よ、もう一度』の熱き思いに立って、奇遇にも昨日と同じ三階だけれども、ここは芸術棟で場所は異なる。序でに壁の色も異なる。


 瑞希先生の代わりに今日こんにち、未来さんとマリさんが部の司令塔……中心に立ってくれる。



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