第二十三回 幾何学的な暗号の解読ついに!


 ――それは五番町という現場ではなく、ここ芸術棟の三階で行われた。



 午後三時の風はエアコンからではなく、並程のウインドウから流れるが、この薄暗い部屋の感じに合わせて、ひんやりと冷たい。リトルほどに鳥肌が立っている。


 これも場面に合わせたのか、瑞希みずき先生は静かに語る……のではなく、あくまで質問。あの幾何学的な『二足す二=Wの設定』について、解読する刻が訪れたのだ。



 ――こんな時に限って、頭の中が真っ白だ。考えられないほどの疲労感。


 でも大気圏を超えるように、その先はひらめきの宝庫。火事場の馬鹿力ではないけど、よわい十二でありながら幾度のピンチを切り抜けてきた。大人のピンチに比べたら、微々たるものかもしれないね。でも、我ながら誇りに思うよ。まあ、そんな感じ。


 お話を少し戻すとね、溢れんばかりの知恵が湧いてきて、如何いかなるエッセイにも対応できる可能性が備わっていて、……って、ほらほら、来た来た!



 一つ、まず話を整理しよう。


 ――瑞希先生のメモには『マリ』というNNニックネームの女性(本名は書いていない)の住所、そして問題の、あの幾何学的な『二足す二=Wの設定』と、それらが丸っこくて大きく伸び伸びとした文字で、横書きで書いてあった。用紙の大きさはBの五だと思われる。


 二つ、Q&A形式で上げる。一問目。


 ――Q、『マリ』という女性の住所について。――A、僕たち二人、その住所まで行きましたが、そこは『海里かいりと書いてマリンと読む』喫茶店でした。


 三つ、Q&A形式で上げる。二問目。


 ――Q、『二足す二=Wの設定』については、思うことを述べなさい。――A、二は人数で僕と可奈かな。もう一つの二は、これも二人。未来みらいさんと『マリ』さん。イコールは『ザ・脚本』を示し、設定はレクチャーの意味。……そう。今度は僕たちだ。



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