第59話 公表 髑髏との会話検証(三)

「交信内容で皆様もお分かりかと思いますが唯、髑髏との会話の声は聞えないので、種々疑問が有ると思います。質疑応答は、検証終了後に纏めて行ないますので、ご承知下さい」

高嶋技官が補足した。


次のテストは髑髏に対しての質問であった。


高嶋技官が、色々な質問資料を持って来て、私にここに掲げている順番で進行するよう依頼された。


分かりました。この項目に沿って、順次聞き取り検証を行ないます。


1 視力の有無

2 記憶力の有無

3 死後の世界

4 どのような人と会話可能か?

5 一番良い会話の条件は?


水槽に全ての髑髏が沈められ、私はガラス管を使い呼び掛けた。 


「皆さん!今ここに、あらゆる分野の専門家の方々が大勢参加されています。

それは「貴方達と私が、何故会話ができるのか?」この事に疑念と興味を持たれ、この疑問を科学的に解明する為今検証をしています。今から色々と質問をしますので、ご協力をお願いします」


「分かった!何でも聞いて呉れ、俺の知りたい事にも答えて呉れ」


「そんな実験をしているのですか?何の気配を感じませんが?協力しましょう」


「鬼頭さん!分かりました色々テストして下さい」 


其れでは皆さんにお聞きします


問 

「第一の質問です。皆さん!視力は有るのですか?あるとすれば、どんな環境と場所で見えるのですか?」


答 

「荒木だ。俺は何も見えない、他の者も見えないと言っていたよ!」


答 

「佐川です。場所に関係なく、視力は全くダメです」


答 

「冨永です。私も見えません、全て真っ暗の闇です。物が見たいです」


私は各々髑髏から聞き取った回答をメモに取り担当官に渡した。


高嶋技官はそのメモを見て「視力は全員無いようですね。それでは次に進んで下さい」と促した。


問 

「第二の質問です。次は皆さんの記憶力に付いての質問です。皆さん記憶力は有りますか?」


答 

「荒木だが、記憶力か。俺は生きて居た時の事を覚えており、無残な死を恨んで居るぞ!」


答 

「佐川答えます。自分も以前は、生前の記憶だけと思っていたが、井戸の中で他の被害者と会話した事と内容を覚えている。という事は、死後の記憶も有るね」


答 

「冨永です。皆と同じ前世と死後の事、殆んど覚えています。だから犯人が憎いのです」


「有難う御座いました」


技官は聞き取ったメモをマイクで読み上げていた。


問 

「第三の質問は、生きている人間が一番知りたい死後の世界の事です。

貴方達も前世ではこの件に付き色々疑問を持っていたでしょう?

死後の世界は、宗教、心理学、医学等学者の方々の数多い書籍類で、その考えと知識等が色々言い伝えられていますが、それは誰も経験のない未知の世界の事です。

今、ここでその事実が知りたいのです」


答 荒木

よし分かった!俺の見た事は一部と思うが、死後の世界は有るよ。俺みたいに特に、恨みを持って死んだ者は死後でも未練が強く、事ある度に前世の地をさ迷うのです。

先程も言ったとおり何も見えないが?


問 鬼頭

死後の世界はあるんですね。この世に未練はやはり、あるのですか?


答 荒木

私の場合も感じます。こうして鬼頭さんと会話が出来る、正に死後の世界と思うよ。私は殆んど井戸の中での会話だから死後の知識は少ないが、他の亡者の伝えでは、死後は男女別々の世界に分けられ、亡者は普通に歩いている感覚だとか。皆足が無く宙に浮いている状態だと聞いた事があります。事実私も足がある感覚だが、眼が見えないので詳細は不明です。


答 佐川

「佐川です。自分も死後の世界の存在を確信しています。私の場合は、大きく分けて、明暗の世界と思われる場所があり、その二ツの場所を自分の考えで行き来しています。

私のように瞬時殺された者は、あまり感情は残らないと思いますがそれでも三度、この無念を母親に知らせたく枕元に立ちました。しかしこちらに視力が無いので母親の表情が確認出来ず残念です」


答 富永

「冨永です。死後の世界、前世で考えていた『お化け幽霊』等は居るのかな?場所によればそのような雰囲気の所もあるが?私は死後の世界と言っても井戸の中とここだけだから。私が感じ取っている死後の世界は一部分だけですね。しかし今から成仏すると『霊界又は魔界』に入るのではと思います」



会場では、この長い会話の交信を聞き取ろうと、参加者の人々が器具を使い、交互に試されていたが、前回同様機器に反応が有るものの、髑髏からの話を直接に聞き取る事は出来ない様子でした。

この項目に付いては、環境及び時間と現代科学の進歩、又は医学面での臨床実験等で近日中により広く解明されるものと思われます。


「鬼頭さん!それでは、次の質問に進んで下さい」


「分かりました」


問 鬼頭

「3人にお尋ねしますが、どのような人と会話が出来るのですか?貴方達と応答出来る何か特殊な信号又は、これに近いエネルギー等を出して居るのですか?それと特殊な才能、心霊学、宗教学等、必要としますか?」


答 荒木

「誰と話せる?俺も分からないよ?鬼頭さんと会話出来る事が、死者の俺達も驚いているのだ。俺達が特にエネルギー等出していないよ」


答 佐川

「私も荒木さんと同じ考えです。こちらから会話出来るようにしていないので」


答 富永

「冨永です。鬼頭さんは、生死を掛けたあの悪い環境の中で、何かの働きが、脳細胞を刺激して、特異体質に変化されたと思いますが」



問 鬼頭

「皆さん色々な回答有難うご座いました。そちらからアクセスしていない様子、確認しました。それでは次の質問にはいります。会話する上で、最良の条件とは何ですか?」


答 荒木

「あらゆる場所で応答してないので不明だが、水中が好条件と思うよ。そのように思っている」


答 佐川

「佐川です。私も、仔細不明ですが、水分が絶対必要と感じます」


答 富永

「冨永です。私も皆さんと同じ思いです」




私は今迄検証した条項を書きとめ高嶋技官に報告した。


1 視力に付いて、四体共、環境場所に関係なく、視力は無。

2 記憶力に付いて、四体共、前世及び、死後の記憶も有る。

3 死後の世界に付いて表現は違うが、皆体験しており存在する事が判明したのである。

4 どんな人と会話可能か?今迄の検証では、鬼頭氏以外の人々は、応答不能と判明した。

5 会話における好条件とは?水分、湿気が必要と得られた。



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