第28話 俸給盗難事件

佐川が配属された教育隊の組織は


教育隊長 山下 大尉

教官 山中・佐藤・東野 各中尉

助教 野中 曹長

田川・三村 両軍曹

人事担当 丸山 准尉・中村 伍長


他5名の兵卒から成る基幹要員


我ら見習い士官教育隊員、三小隊120名


総員135名であった。


教育期間は2ヶ月間で、早くも半月が過ぎ、11月15日給料日の深夜に候補生3名の俸給盗難事件が発生したのである。


翌朝全員営庭に整列後、隊長より厳しい口調で事件の概要説明が有った。


隊長の命令一下、基幹要員に依る捜査が行われ、各人の私物検査と建物内外の徹底した検査を実施、一般社会では想像もつかない異常な空気の中、随所で各班長の大きい声が響きいた。


「誰が盗った!今自己申告すれば出来心扱いの始末書で済むが、あとで見付かればどうなるか分かっているだろうな!もしも憲兵隊の知る事となれば、厳しい追及と仕置きの捜査で親兄弟、身内縁者迄も不幸になるぞ!」


と大声で怒鳴り、この間教官以下基幹要員は、昨夜の不寝番勤務者と、各候補生の金銭を調べ、先日受け取った俸給以上のお金を持っている者達には、厳しい詮索と威圧的な言葉での調査が行われた。


「おい、~候補!このお金はどうした?昨日受け取った給料より多いではないか?」


疑わしき答や、即答出来ない隊員は、容赦なく別室に監禁されて益々厳しい取り調べと拷問が行われ、不幸にも所持金を多く持っていた私もその中にいた。


「佐川!確か貴様には女友達がいたな?逢引にお金がいるもんな、この三百数十円は盗んだ金だろう!昨夜不寝番勤務だったと聞いているが、何直の勤務だった」


「はい!深夜勤務の五直です。私は盗っていません、この金は母からの送金です。たしかに女友達はいますが逢引する程の仲ではありません」


「五直か、丁度皆が疲れて寝入った深夜一時の勤務だな・・・どのような方法で盗んだのか素直に白状しろ!」

大きな声で詰問してきた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る