第21話 部隊復帰


自衛隊関係者にも集合が掛かり、連隊長在席の元、第二係主任『尾方三佐』から、先程の捜査課長の注意事項が再度述べられ、今後警察に協力する旨、周知徹底された。


私は、山本三曹と病院に戻ったが、看護婦さん達が噂を聞き付け、事ある度に仔細を求められたが、私は怪異の件は話すことなく、井戸に落ち込み自力で脱出した事に留め聞かせた。


私は自分が体験したこの非科学的な体験との出会いを考えた。


もし自衛隊に入隊しなければ、このような怪異に遭遇することは無かったであろう。


今頃は生まれ故郷の美しい瀬戸内の島での、漁獲の自慢話や漁師仲間と時を忘れて酒を飲んでいたはずだ。


また嫁取り話や、四季折々の村の行事、特に秋祭りの役割分担と踊りの練習日の日割り等、幼なじみと協力し合ってのんびりとした日々過ごしていただろうに・・・


しかし考えれば、もし今も瀬戸内の島内での生活ならば文字通り島国根性で小さな人間に収まっていたはずだ。


反対に山に架かる雲の状況で、翌日の天気及び波の状況を知り、又美しい夕日で長期の天候を当てるというような島で生きる知恵は育成されたことであろう。


人生とは面白いものだ。


しかし私は島を離れ、自衛隊勤務を選択して姫路部隊に配属、その天空に聳える姫路城を朝夕望む今の生活がある。


歴史好きな私は、今から四百年前この地で織田や毛利などの各大名の駆け引きの戦さが想い起こされる。


また軍馬の嘶き、武士の動きを想像するとそのドラマの中に己が潜入することさえある。


目前に豊臣秀吉の軍師『竹中半兵衛』『黒田官衛』の軍略説明と相手城主の動き、特に『三木城主・別所長春』『鳥取城主・吉川』『備中高松城主・清水宗治』等の歴史的有名人たちの姿が見えるような気もする。


兵糧攻め又は、水攻め等の苦難に追い込まれ一族郎党の動き等を「歴史の街 姫島」で学ぶ事で、私の人生教訓を得る機会も得ました。


人生とは正しくドラマです。


時、場所、その時に於かれた行動、人々との出会いなど目に見えぬ個々の運命がある事を体験しました。


陸上自衛隊の生活においても、毎日が予期せぬドラマとの遭遇でした。


ましてや想像もしない今回の異常体験で聞かされた被害者の無念の叫びを肝に命じ、これらの事件がらみを説き明かす為、警察関係の署員との出会い等を考えると責任を感じています。


また精神的負担等々を抱えての入院は終生忘れられない療養生活となりましたが、院後の治療での回復も早く六日後には退院を迎えることができました。


私は病院関係の皆様に御礼を述べ、同期生の待つ姫路部隊に帰り日々の訓練に入って行った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る