第15話 遺体回収(一)
五 遺体回収 その1
翌朝
山本衛生隊員が再びベットの傍らに立っていた。
「体調はどうかな?昨夜、今日遺体を収容するので『君に立ち会ってほしい』と連絡があったが、君があまりに熟睡していたので起こす事をためらっていた。用件は聞いておいたよ」
「遺体収容ですか?何時からですか?」
「10時からと云っていたね」
「分かりました。私はもう大丈夫です。直ぐに身支度をするので暫く待って下さい」
その後、準備を終えた私は医師の外出許可を取り、山本隊員と衛生隊の車で現地に向いました。
外は雨上がりの日差しが強く、私は少しふらつく状態で現場に来て見ると、井戸脇の空地に自衛隊の大型車両数台が、外部から井戸が見えない状態に駐車していた。
さらにその外側を警察の車両が取り囲み、厳重な態勢が敷かれ井戸のそばには排水のための消防自動車も待機していた。
空き地及び幕舎周辺の不整地には、幾筋もの轍が幾何学模様を作り、車から物品を降ろす警官の動きが慌ただしく見て取れた。
問題の井戸は雑草、樹々の小枝が昨夜とほぼ同じ状態で保存され、これでは昼間でも井戸の存在に気付かないだろうと思った。
改めて恐怖の井戸の入り口が異様な姿に見えていた。
井戸周囲20m位には、警察官が配置され、西側の白い天幕には、制服警官に混じり、私服と白衣姿の人々の姿があり、東側の平地には緑色の天幕が設営され、姫路部隊より、連隊長を始め、数名の幹部が在席、その中に教育隊長の顔もあり連隊長となにやら談話されていた。
私が車両から降りると、幕舎の中より衛生隊長が直ちに駆け寄り
「鬼頭候補、今から井戸底より遺体回収と現場の実施検証が行なわれるが大丈夫か?」
と聞かれ、其処にある野外椅子に掛けるよう勧められた。
「少し目眩がしますが大丈夫です」
と答えると、隊長は連隊長に報告、以後連隊長と共に警察署員の幕舎に入って行き、暫くして刑事を先頭に大勢の警官が幕舎から出揃い、自衛官共々集合した処で
「それでは今から井戸底の捜査を始めます!私はこの現場の責任者で、姫路署に籍を置く捜査第一課長の『水野武彦』です。よろしくお願いします」
水野課長の自己紹介後、関係署員方々の紹介を済せ、今から行なう捜査上の注意事項が述べられ、皆固唾を呑み待っていた捜査に移りました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます