第二王女と、火炎の魔法師 3
キリマ・カインズはディグ・マラナラを落とすために、一先ず押してダメなら引いて見ろという作戦に出てみる事にした。
今まで散々、ディグに対して好意を顕にしていた。
結婚してほしいと言い続けて、断られ続けていた。
ならば、それを急にやめたら少しぐらい何か感じてくれたりしてくれるのではないかとそう考えた結果である。
(ディグ様の元へ行けないのは……正直つらいけど。というか、ディグ様断ちをしなければならないなんて悲しすぎる。ディグ様の元へ今まで隙あらば行っていたから……だから私とても寂しい。でもディグ様が私に振り向いてくれなかったら他の人の元へ嫁がなければならなくなって……そうなったらディグ様の事を見る事が出来なくなってしまう。それならば、ディグ様断ちになれておかなければならないんだけど……でも、でも……考えただけで辛い)
キリマはディグから距離を置くことにして、距離を置いている。ディグの姿を見ないようにしていた。姿を見た瞬間、ディグ・マラナラの元へ飛びついて、求愛行動をしてしまいそうだと自分で自覚していたからである。
しかし、今まで散々求愛行動をしていたというのにそれを止めるというのはキリマにとってはつらい事であった。
キリマはディグ断ちをしているだけでも時たま挙動不審になっていた。
「ディグ様……ディグ様……ディグ様……」
「キリマ様……ご自身で決めた事でしょう。何を嘆いているのですか」
「だって、ディグ様の姿が見えないんだもの。私はディグ様に会えないのがつらいの。だって今までディグ様に求婚する前から、ずっとディグ様を時間があれば見に行っていたんだもの!! ディグ様の姿をこんなに見ない事なんて初めてなんだもの。ディグ様の事を見つめたいし、ディグ様の声を聞きたいし……ああああ、辛い!!」
「……ディグ様がお心を返して下さらなければそれが当たり前になるんですからね?」
「うっ。そ、そうだけど」
キリマは親しい侍女の言葉に胸を押さえている。考えただけで心を痛めているようだった。
ディグ・マラナラの事を落とせなければ、その姿を今までのように見る事は出来なくなる。キリマはどこかに嫁いでいく事になり、国外に嫁ぐ事になる可能性もある。国内に嫁いで行ったとしてもディグの姿を見る事が出来なくなってしまうのだ。
キリマはそんな未来が来ないために、今、ディグ断ちをしている。押して駄目なら引いて見ろを実行した結果がどうなるのか分からないけれども、それでもキリマをモノにするために努力だけはしたかったのである。
しかし、ディグ断ちをしてしばらくが経ってもディグ・マラナラが行動を起こす事はなかった。
ディグが何か反応を示してくれないか。
ディグが何か感じてくれないか。
ディグが自分の事を好いてくれないか。
その事を期待しての行動だったが、ディグ断ちを数か月したとしてもディグはキリマに対して何か反応を示してこなかった。
キリマ自身はディグの姿を見ないようにしているが、ディグがどのような行動を起こしているかというのは周りのものたちから情報を収集していた。けれど、ディグ・マラナラは今までと変わらない生活を過ごしている。
キリマが居ない事を何とも思っていないと言った態度らしい。最も、内心はディグがどんなことを考えているかというのは分からないものであるが。
しかし、キリマとしてみれば悲しい気持ちになりながらもディグ断ちをしているというのに何も効果がないという事がショックだった。
「キリマ様、どうするんですかー? そろそろキリマ様も他の所に嫁がななければならないとかになっちゃいますよ?」
「……分かってるわ!! よし、私は今からお父様の所に行ってくるわ。もう時間がないもの。だからこそ——私はお父様の所に行くわ」
「諦めるという選択肢はないのですね……」
「当たり前だわ! 私はディグ様のお嫁さんになるんだから!! 絶対に諦めないわ。……最後の最後まで、ディグ様と結婚する事を目指すの!」
キリマはそう言い切って、カインズ王国の王であるシードル・カインズの元へと向かうのだった。
そこで、シードルが「は!?」と声をあげるような事を提案して散々止められるわけだが、キリマは押し切って、それを実行する事が決まるのだった。
―――第二王女と、火炎の魔法師 3
(第二王女は火炎の魔法師断ちをしたが、効果はなかった。その結果、第二王女は新たな行動に出る事を決める)
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