カインズ王国の王妃になる少女 2
「はじめまして、グニー・ルクラと申します」
今、グニーの前には婚約者であるレイアード・カインズ様、そして国王陛下と王妃殿下、第二王子であるライナス・カインズが居た。
グニーは、カインズ王国の王族達が全員美しくて驚いた。王侯貴族は見目が整った者達が多いが、目の前にいるカインズ王国の王族達はとても美しかった。自分の結婚相手であるレイアードが想像以上にかっこよくて心臓をバクバクさせていた。
(……男の人なのに、凄い綺麗だわ。カインズ王国の王族達は美しいと聞き知っていただけども本当に美しいわ。こんな人の隣に立つのは大変だわ……。でも、王妃として頑張らなければ)
レイアードは丁寧にグニーに対応してくれた。その間、ずっと心臓が鼓動していた。
「城の中を案内しよう」
「はい」
レイアードに手を伸ばされて、その手を重ねる。
グニーはドキドキしていた。緊張しながらカインズ王国の王宮内を案内される。
(……レイアード様、どういう人なのだろうか。もっとレイアード様の事を知っていきたい)
グニーはそう思いながら、レイアードと共に歩く。
レイアードはグニーの目から見てとても完璧な王太子だった。優しくて、美しくて、王太子として優秀だと噂されている。グニーの目から見て、完璧な王太子であるその存在に自分なんかが王妃でいいのだろうかとさえ思うほどだった。
「ルクラ王国では魔法が盛んなのですよね? グニー様はどのような魔法が得意ですか?」
「そうですね。私は結界などの守りに関する魔法が得意ですわ」
グニーが得意とする魔法は攻撃的なものではなく、守るための魔法だった。また王族の女性はルクラ王国では特に自分を守るための魔法に力を入れる。それは例えば敵に捕まった場合などに自分の身を守れるようにという思いのためだった。
ルクラ王国は魔法国家と呼ばれていようとも小国である。現状、ルクラ王国は平和だがいつどんなふうになるか分からない。それもあってそういう魔法に力を入れる。
「レイアード様」
そう呼びかけてグニーが言葉を発しようとした時、グニーは理解出来ない物を見た。
窓の外、眼下の庭園に映る物を見た時に固まった。
―――庭園では第三王女のナディアとその婚約者である『破壊神』ヴァンが居た。
グニーは人の魔力を推し量る事も得意としていた。だからこそ、それを……ヴァンを見た時に固まってしまった。
(なに、あれ……)
ヴァンの魔力はグニー・ルクラにそうまで言わしめるほどの物だった。濃い魔力。何処までも強力で巨大な魔力。それをこんなに遠目からでも実感できる人物がいるのかとグニーは驚く。また、ナディアとヴァンの側には数匹の召喚獣が控えており、その存在もまた彼女を恐怖させるには十分な魔力量を持ち合わせていた。
「グニー様、どうなさった?」
「え、ええっと、あのレイアード様、あれが……『破壊神』様ですか?」
あんな風な魔力を持つ存在が居るのだろうかと考えた時に、この国であれだけの魔力を持ち合わせているあの年頃の存在なんて『破壊神』と呼ばれるようになった少年しか思い浮かばなかった。
レイアードはグニーの言葉にヴァン達の方を見る。
「ああ、そうだよ。あれがヴァンだ。何れ義弟になるから後で挨拶をさせよう」
「え、ええ」
「どうかしたのかい?」
「……『破壊神』様は本当にすさまじい魔力をお持ちなのですね。あれほどの魔力をお持ちの方は我が国にだっておりません。それにあの周りにいる召喚獣達も、とても強い力をお持ちですわ。それに驚いてしまいました」
「そうなのか」
レイアードはヴァンの魔力を通常で感じる事は出来ない。だからこそ、グニーの言葉に感心していた。
「ええ、とても凄い魔力だわ。我が国にもこのような事は出来ませんもの。あれだけの魔力があれば『破壊神』と呼べるだけの所業を出来るのも納得いたします」
グニーはそう思いながら、恐怖と同時に興奮を覚えていた。
(あんなに大きな魔力を人の身で持っているなんてなんて事かしら。恐い。でも——その力を見てみたいとさえ思える。圧倒的な魔力。どんな魔法を使えるのだろうか。どんな魔法でシザス帝国に勝利したのだろうか)
あまりにも大きな力だった。
大きすぎるその力に惹かれていた。人の魔力を推し量る能力があるからこその畏敬。どのような魔法を使うのだろうか、どのようにしてシザス帝国に勝利したのだろうか、そんな興味がわいてならなかった。恐い、けれども知りたいと願う。
(でも……そうね、怒らせたらまず私の身は破滅するわ。『破壊神』様はどのような性格なのでしょうか。色々聞いても怒らない方だといいのだけど。って、私レイアード様と一緒に居るのだからまずはレイアード様を知ることから始めないと)
好奇心が沸いて仕方がなかったが、グニーははっとなった。
好奇心でヴァンの事を気にしてしまうけれども、婚約者と仲良くなることの方が先だと実感したのだ。それからレイアードと交流を深めるが、レイアードは完璧な王太子という印象しかやはり持てなかった。
―――カインズ王国の王妃になる少女 2
(少女は『破壊神』を見た。そしてその力を実感する)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます