136.『雷鳴の騎士』と『雷鳴の騎士』の弟子の会話について
「ルクシオウスゥゥゥゥウ」
「おわっ、なんだ、どうした!!」
自身の名を呼びながら、飛び込んできた自分の弟子に対し、『雷鳴の騎士』ルクシオウス・ミッドアイスラは戸惑ったように声を上げた。
ルクシオウスは、弟子たちの模擬戦のあとシザス帝国のことを国王であるシードルや『火炎の魔法師』であるディグ・マラナラと話し合っていた。それがようやく終わって、与えられた客間に戻ってきてみれば飛び込んできた弟子。驚くのも当然であろう。
「……俺、好きな子出来たかも!!」
「はぁ?」
何を言い出すかと思えば、好きな子が出来たかもなどと言い出すザウドックにルクシオウスは声をあげる。
「ちょっとしか、話せなかったけど、凄い綺麗だった。あんな綺麗な子いるんだってびっくりした。俺、もっとあの人と話したい! ルクシオウス、協力しろ!」
「いや、まず、誰だよ、そいつ」
「この国の第一王女様! さっき会った!!」
先ほど会った時、思わず綺麗で上手く会話が交わせなかった。ちょっとだけ話したあと、第一王女であるフェールと第二王女であるキリマはどこか行くところがあるからと去っていってしまったのである。
「……それはまた難儀な相手を」
ルクシオウス、テンションが高いまま語りかけてくるザウドックに何とも言えない感想を抱く。
第一王女、フェール・カインズ。ルクシオウスはパーティーで目撃したぐらいだが、確かに綺麗な少女だったとルクシオウスは思う。
(……ザウドックが、第一王女をねぇ。戦争をしていたとはいえ、今は同盟関係だし、ザウドックが頑張ればいけるか? 英雄に嫁ぐ王女なんて珍しくもねぇし)
ルクシオウスはザウドックが第一王女に惚れたということに、そんな思考をする。
実際問題、英雄に王女が嫁いだり、貴族が嫁いだりすることはそれなりによくある話だ。戦争をしていた頃ならともなく、今は同盟関係にある。それも相まって別に無理な話ではないだろう。
「ま、お前が第一王女に惚れたのはそれはそれでいい。それなら、お前は王女をちゃんと落とせよ。王女もお前を望むっていうなら話を通してやるぞ?」
「お、落とすって!」
「どもるなよ。そこは落としてやるぐらい、言え」
「そんないっても! 人の心何て難しいだろう。そ、そりゃああの綺麗な人が俺をす、好きだっていってくれたら嬉しいけどぉおお」
「……とりあえず、ヴァンに手伝いをしてもらったらどうだ? あいつ、第三王女と仲が良いらしいからな」
ルクシオウスは、青春だななどと思いながらそう口にする。
ヴァンと第三王女の正確な関係は分からないが、仲が良いようだし、第一王女とザウドックが会えるようにはしてくれるのではないかと考えたのだ。
「そういえば……模擬戦のあとあいつ王女様とどっかいったんだっけ」
「そうだ。呼び捨てにしていたしすごく仲が良いんだろうな」
「いいなぁ、俺もあの人と……そんな関係になりたい」
「なりたいなら行動するしかねぇだろう。いいか、女を落としたい時は——」
「……奥さんも恋人もいないルクシオウスの助言ってあてになるのか?」
「俺はいないんじゃなくて作ってねぇんだよ」
ちなみにルクシオウスもディグ同様、女遊びはするものの本命はいなかった。ザウドックはそんなルクシオウスの爛れた男女関係だけは引いていた。同じ男でもそういうのしたいとザウドックは思っていなかった。
「つか、お前これが初恋か?」
「いや、違う!」
「そうなのか? 初恋かと思ったんだが」
「小さい頃近所のお姉ちゃんが好きだったからな! 初恋ではない。大体この年で初恋もまだの奴なんてそうはいねぇだろ」
ザウドック、十四歳。フロノスと同じ歳の彼はそう言い放った。
「へぇ、そうなのか」
「ルクシオウスの初恋は?」
「そんなの覚えてねーよ」
実際は覚えていたけれど、恥ずかしいからそんなこと言わないルクシオウスである。そんなルクシオウスの心情など知らないザウドックは素直に覚えてないなら仕方がないとそれ以上問い詰めない。
「なら、仕方ないな。思い出したら教えてくれよ!」
「……ああ」
そんな風にルクシオウスは答えながら、こいついつか誰かにだまされそうだなと心配になっていた。
「それより、ザウドック、とりあえずヴァンのところに第一王女と会えるように出来ないか聞きにいかねぇか。こういうことは早い方がいいだろう」
「ああ!」
と、そんな会話を交わしてヴァンのもとに突撃した二人。しかしその場には、王女三人も一緒にいたため、交渉する前にもう第一王女様に会えたとザウドックは動揺してしまうのであった。
ちなみにヴァンのいる場所を二人に教えたディグはその場にフェールとキリマもいることは知っていたがあえてそれをルクシオウスとザウドックには伝えていなかった。
―――『雷鳴の騎士』と『雷鳴の騎士』の弟子の会話について
(雷鳴の騎士の弟子と、雷鳴の騎士は仲が良い師弟である)
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