番外編4
ミーシェ・ルージーは兄の言葉の意味を知る。
私の名前は、ミーシェ・ルージー。ルージー公爵家の次女で、末っ子だ。私には三人のお兄様と一人のお姉様が居る。私は家族が大好きだ。その中でも好きなのは、五つ上のクアン・ルージーというクアンお兄様である。
クアンお兄様は、お人形みたいにかわいらしくて見ているだけでも幸せな気持ちになる。だから私は貴族の娘として、いつか家のためになる結婚をするんだって言われ続けていた。でもクアンお兄様みたいな綺麗な人と、結婚したいっていうのが私の目標なの。
お父様に結婚相手の候補として、お兄様と同じ王宮魔法師の弟子であり、最近噂されているヴァンという方が上がっていると聞いた。私より、二歳年上なのに色々凄い方だとは聞いている。
それで私か、お姉様を結婚相手にしたいのがお父様の目論見らしい。ただ、その方を実際知っているクアンお兄様は、「絶対無理」と断言していた。どうして絶対無理なんていうのかさっぱり分からないというのが正直な感想だったの。
それで、お父様からはナディア様と仲良くなってヴァンとも会うようにといわれたの。
ただ本人は、遠征に出かけていてここにはいないので、まずは同年代と交流を持とうとしているナディア様と仲良くなるようにという事だった。
私はナディア様の事を気になっていた。ずっと表に出てこなかった王女様。私はまだ年の問題でパーティーにほとんど参加していないから、ちゃんとナディア様と会った事がなかった。そして会ってみて、なんてきれいな人だろうと思った。お人形さんみたいに綺麗で、一目見て気に入った。
クアンお兄様と結婚してくれたらお似合いなのにと思って、是非そうしたいと思った。
でも「あー……俺は無理。俺がナディア様と結婚するのも、ミーシェがヴァンと結婚するのも無理だろ」とクアンお兄様に言われた。やっぱりその時の台詞の意味もさっぱり分からなかった。だけれども、ヴァンが帰ってきてから、ナディア様とヴァンの事を見たら、私はその言葉を納得した。
そもそもの話、ナディア様は、ヴァンが帰ってくるという話を聞いてとても嬉しそうな顔をしていた。その段階で私はあれ?と思った。もしかしてとも思った。それで、その予感はあたった。
「ミーシェさん、ヴァンですわ」
ヴァンを紹介してくれたナディア様はとても嬉しそうな顔をしていた。そして紹介されたヴァンは……正直普通な男の子だった。言われなければこれがあの『火炎の魔法師』の弟子だとは分からないような男の子だった。
正直な感想を言うと、私は綺麗な人と結婚をしたいと思っていたから好みではなかった。それに……
「えっと、ナディアの……ああ、っとナディア様のお友達ですか。ヴァンです」
……この子、今王女様のナディア様の事呼び捨てにしたわね。普段から呼び捨てにしているぐらい仲が良いのだろうと、すぐ分かった。ナディア様もにこにこしながらヴァンを見ている。
この二人、仲が良い。
bというか、二人とも両想いなんじゃないかと、見ていたらまだ幼い私でも分かるぐらいである。お兄様がヴァンと結婚するのは無理といっていたのはこういう事だろうかと思った。
これだけ両想いだったら割り込むのは確かに……無理というか、あまりやりたいとは思わない。お父様は多分ヴァンを取り込みたいとかそういう感じなのだろうけれども、王女様の好きな相手を奪うとかそんなことをお父様も望んでいないだろうし。
何より、ナディア様は綺麗で、一目見て気に入ったお友達なのだから幸せになってもらった方がいいなと思ったりする。うん、お父様にはナディア様とヴァンが両想いっぽいからといっておこう。
「よろしくお願いします。私はクアンお兄様の妹ですわ」
「クアンの妹……」
「ええ、そうですわ」
それにしても、私に興味がなさそうですわ。あんまり他人に興味を持たない方なのかもしれません。それに、クアンお兄様の妹としてしか私の事認識していない感じなのかもしれない。
それにしてもお父様にがうちに取り込みたいと思っているぐらいの人なのだから、仲良くしているには越したことはないでしょうけど……。ナディア様とお友達で、クアンお兄様の妹としては認識してくれているみたいなので、徐々に名前を覚えてもらいましょうか……。
「ヴァン、ちゃんと仲良くしてね」
「うん、ナディア……様が言うなら」
「ヴァン、ナディア様と普通に過ごしているように話してもらって構いませんわよ? 私は他言はしませんから」
私は特に気にしない。というか、そのままの姿を見た方が面白そうだからそっちを見たいなと思っての言葉である。
「えっと、いいの?」
「ええ、どうぞ」
それにしても平民育ちというのもあって、言葉づかいとかはまだ苦手なようですね。でもディグ様のように活躍していくのならば、そういう態度でも許されるのかもしれないけれど。実際、『火炎の魔法師』もそんな感じですし。
それからヴァンは普段通りに話し始めた。その様子を見ると呼び捨てで、敬語もなしで、本当に仲が良く、見ていてほほえましい気持ちになった。
とりあえず、クアンお兄様の言葉の意味もわかったし、お父様にちゃんと言おうと私は考えるのであった。
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