第127話



地上に戻った後、他の盗賊どもの奴隷紋も消すため、全員上半身だけ服を脱がさせた。

残りは男だけだから問題ないだろう。


ふと思ったが、こいつらはどの程度顔バレしてるんだ?


「この中に盗賊として指名手配だの顔バレだのしてるやつはいるか?」


一人一人奴隷契約&解除をしながら全体に向けて確認を取るが、誰も答えない。

そりゃこんなところに引きこもってるやつが町とかでの情報を得る機会なんてないからわからねぇか。


「質問を変える。今まで襲ったやつに逃げられた。もしくは殺さずに生かして帰したことがあるやつは手をあげろ。」


5人か。案外少ないな。


まぁ他のやつも顔バレしてる可能性がないわけじゃないが、ここで嘘をついたせいであとあと困るのは本人だろうから、かまわない。


顔バレの確認を取った後は無言で奴隷契約&解除をしていたからか、手をあげた5人はちょっと緊張してるな。

俺が売るとでも思ってるのか?

それが結構な金額になるならそれでもいいが、一度きりなんてもったいないだろ。




やっと全員の奴隷紋を消し終えた。


思った以上にめんどうだったが、とりあえずひと段落だ。



「これでお前らは誰の奴隷でもなくなった。だから最後のチャンスをやる。自由になりたいやつはここから消えろ。追うつもりもないし、今後どこかで会っても俺らに害がなければ関わるつもりはない。ここに残るのであれば仕事を与えるが、俺の話を聞いた後に逃げたら…まぁいわなくてもわかるだろう。」


どこからか唾を飲み込む音が聞こえた気がした。

さすがに幻聴だろうが、そんな雰囲気が漂っている。


「べつに仲間と相談してもいいが、最終的な判断は個人でしろ。自力で人生をやり直すか、奴隷紋こそないが俺の奴隷のように働かされるか、好きな方を選べ。」







…残ったのは20人か。けっこう残ったな。

せっかくのチャンスを無駄にして、馬鹿なのか?


「じゃあ約束通りに仕事を与える。お前らにはまず2つのグループに分かれてもらう。1つは今まで通り盗賊を続ける組。もう1つは冒険者となって、盗賊を狩ったり馬車の警護をしたりする組だ。盗賊をやりたいやつは俺の左手側、冒険者をやりたいやつは俺の右手側にわかれろ。これに関しては相談は無しだ。もちろんさっきの5人は強制的に盗賊を続ける組だ。」


俺がカウントダウンを始めると、跪いてたやつらが急いで立ち上がり、それぞれの思う方へと動き出した。


盗賊組が8人、冒険者組が12人。


「じゃあまずは盗賊組。お前らにはいくつかのルールを定める。故意にルールを破ったことが俺の耳に届いたら殺すからな。まず、武器を持たないものに攻撃することを禁止する。罪人以外を攫うことを禁止する。顔は必ず隠せ。勝てない相手のときはすぐに逃げろ。必要以上に人を殺すことを禁止する。もちろん武器を持った相手と殺し合いになった場合は仕方がない。相手が冒険者なら覚悟の上だろうし、死んだとしたら弱いのが悪い。あとはこいつらが警護するやつらは襲うなってくらいだな。とりあえず今思いつくのはこの6つ程度か?まぁ追加があればまた伝える。」


「はい。」


忍者っぽい女が返事をした。

こっちのリーダーはこいつのようだな。


「今度は冒険者組だが、お前らはまず冒険者登録をして、盗賊関係の仕事が出来るランクまで上げておけ。お前らは12人だからちょうど6人2組に分けられるし、最悪2人だけランクが上がってれば問題ない。パーティー分けはお前らに任せる。そして、お前らが警護する人たちを襲ってきた盗賊は必ず殺せ。逃げた者を深追いする必要はないが、相手がどんな命乞いをしようと聞く耳を持つな。むしろ命乞いをさせる間も無く殺せ。他の依頼を受けてもかまわないが、あまり難しい依頼や時間のかかる依頼は選ぶなよ。あと、お前らが受けた依頼を仲間に邪魔されないように連絡は密に取っておけよ。」


「はい。」


こっちは盗賊には見えないくらい爽やかそうな青年が返事をした。

若いけど冒険者組のリーダー的な立場なのか?…まぁいい。


「そして、ここが1番重要だが、盗賊組と冒険者組で稼いだ金の3割は俺に納めろ。そしたら今後お前らを殺すことも捕まえることもしないと約束してやる。3割とかの計算が難しかったら、とりあえず半分は使わずに貯めておけ。そしたら俺がそこから6割持ってくから。」


「「はい。」」


忍者風の女と爽やかな青年が声を合わせて返事をしたが、本当にいいのか?


何もしてないやつが3割も稼ぎを持っていくことにこいつらは疑問を持たないのか?


…まぁ盗賊になるくらいだから、そういった考える頭がないのかもな。


いや、こいつらって無理やり盗賊にさせられただけだから、もとは一般人だよな?でもそういや町でも学校みたいなとこは見かけなかったし、そういった学び舎がないからこんな大人になるしかないってことか?


まぁこいつらはクズだろうが馬鹿だろうが大人だ。

俺がどうこうしてやる必要はねぇだろう。仕事を与えてやっただけありがたく思え。つってもその仕事は俺が稼ぐためなんだけどな。


「あとは暇なときは森の魔物の討伐でもしてろ。レベルは上がるし食材が手に入るしで一石二鳥だからな。」


あとは連絡手段と思ったが、べつにいいか。

金に困ったら取りに来るくらいで、あとは貯金でもさせときゃいい。もともとなかった金なんだから。


そんなことを考えていたら、アリアが安物っぽい指輪を4つ差し出してきた。


「これはなんだ?」


「…以心伝心の指輪です。」


…。


「は?これって高いんだろ?買ったのか?」


「…指輪は1セット銅貨10枚で買いましたが、加護は自分でつけました。必要なときがくるかと思い、念のために用意しておきました。在庫はまだあるので、気にせずに使ってください。」


よく見ると2つずつの2種類の指輪のようだ。

それぞれで対になっているのだろう。


せっかくアリアが用意してくれたのだから使うか。


指輪を忍者女に2つ、青年に1つ放った。

俺と忍者女、忍者女と青年の組み合わせになっている。


とりあえず指輪を左手の人差し指にはめたが、だいぶ増えたな。

どこの指にはめても不思議と邪魔にはならねぇけど、歩からもらった指輪を外す気はねぇから全部で8個までしかつけられねぇんだよな。


そういや前に犬型イーラの首に軽量の加護のついた短剣を鞭で取り付けても加護は発動していたから、ネックレスに指輪をつけるってのも出来そうだな。

今度試してみよう。



「話は以上だ。何かあったらこの以心伝心の指輪で連絡をよこせ。俺は基本遠くにいるだろうから、俺に連絡するときはMPの多いやつが使った方がいいかもな。」


「はい。」


返事をした忍者女を見る。


「それじゃあ金の置いてある場所に案内してもらおうか?」

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