第125話



イグ車の旅は悪くない。


この車が王族用とかで特別製なのかもしれないが、木の車輪で走ってるのになぜかほとんど振動がない。


スピードも原付よりは速い気がするから十分だろう。


無理させればイグザードは不眠不休で3日は走れるほどタフらしいから、走らせながら車内で寝ることも可能のようだ。まぁそんなことさせたら潰れるだろうから休憩は取らせるがな。


御者台には先頭イグ車がアリアとセリナ、次が俺とウサギ、最後がヒトミとサーシャが乗って、イーラは最後のイグ車の荷台に乗っている。

ガキどもは前から10人、10人

8人で荷台に乗せている。


こんなゆっくりした旅はこの世界に来て初めてな気がするから楽しいっちゃ楽しいんだが、ドナドナのフレーズが頭をよぎって楽しみきれない。

それに隣のウサギがなぜか落ち込んでるから俺の気分も落ち込みそうだ。


「なんかあったのか?」


原付以上の速度で走ってるから風はあるし、その風は感じている。なのに会話は普通にできるという不思議。

この世界に来て俺の耳が良くなったとかか?


「なんでもない…です。」


そんなあからさまに気落ちしてんのになんもねぇわけねぇだろ。


「いいからいえ。いわなきゃわからねぇ。いわずに落ち込んだままでいるつもりならヒトミかサーシャと場所を変わらせるぞ。」


先頭は道を知ってるアリアと超感覚を持ってるセリナの組み合わせとして決め、最後尾の荷台には後ろから攻められた時に対応でき、なおかつガキどもとそれなりに仲良くしてるイーラをと決めただけで、真ん中と後ろの御者台はどんな組み合わせでも良かった。

それでたまたまこの組み合わせになっただけであって、めんどくさい状態で居続けるってんなら変えさせるつもりだ。


「…ウチ、今回は速さ勝負だから役に立てると思ったのに、けっきょく何もできなかった。」


俺の役に立ちたくて今回の魔王討伐に立候補してたのか。最初は俺のためじゃないとかいってた気がするが、まぁいい。


「そんなことをいったら俺は今回ヒトミとウサギが戦ってた魔族をストレス発散のために横取りした以外は何もしてないぞ?だから気にすんな。」


「…はい。」


はぁ…。この空気うぜぇな。

べつにウサギが何も出来てねぇとは思っちゃいねぇが、これじゃ口で何をいっても聞かねえだろうな。


「そんなに俺の役に立ちたいか?」


「べ、べつに…。」


ウサギの目をずっと見ていたら、ウサギはいつもの口調で喋ろうとして言葉を止め、真剣な顔になって再度口を開いた。


「役に立ちたい!」


「わかった。ならヒーローごっこでもするか。」


「ヒーローごっこ?」


ウサギはキョトンと首を傾げた。

さすがに分かりづらかったか。


「悪党を倒すヒーロー。要するに盗賊狩りだ。」








御者台から「止まれ!」といったら、セリナには聞こえたようで前のイグ車が止まった。

前が止まれば自然に真ん中も後ろも止まった。


ガキどもは荷台に寝かせたまま、一度全員を集めた。


「ガキどもを安全に村に届けるために危険を先に排除することにした。要するに盗賊狩りだ。狩チームは俺、イーラ、セリナ、ウサギだ。だからアリアとヒトミとサーシャはそれぞれイグ車の運転を任せた。」


「…現在は連絡手段がありませんが、集合はいつどこでとしますか?」


確かに以心伝心の腕輪はカレンに渡しちまったからな。


「とりあえず日が出るまでここで野宿だ。日が出たらアリアたちは予定通りアラフミナに向かってくれ。俺らは頃合いを見ながらアリアたちが国境に着く前に合流するようにする。」


「…はい。」


このまま再出発でも良かったが、さすがに眠かったからな。

最初は御者台で1人ずつ交互に寝て、イグザードが潰れない限界まで走り続けるつもりだったが、俺らが抜けたらアリアたちは1人一台運転しなきゃだから、ここで寝ることにした。





日が昇るとイーラに起こされ、寝ぼけながら雑炊のようなものを作り、全員で朝飯を食べた。


さて、それでは安全確保という建前の金集めに行くとするか。



イーラの変身を見せないためにガキどもを荷台に詰め込んだあと、イーラを犬型に変身させ、俺とセリナとウサギが乗って、先に出発した。


盗賊探しはセリナ任せだ。



これが思いの外簡単に見つかった。

というか山に入ると1集団はいるし、デカイ山だと距離を置いて3集団いたりもした。


でもクローノストは整備された道を冒険者がよくうろついてるらしく、あまり商人を襲えないらしい。

ちなみにこれは捕まえた盗賊たちが勝手に喋った情報だ。


だから持ち金がガンザーラの盗賊よりも少なかった。


今のところ全部で7つ潰したが、合わせても金貨10枚分ない程度だな。


代わりに装備品の蓄えが多かったが、どれも臭いし汚いから放置した。


今回の盗賊は俺たちと出くわした際に脅してきたくせにウサギが数人蹴り倒したら降参してきた雑魚どもだ。

だからこんな短時間で7つも潰せたんだけどな。

こいつらは最初に脅しはしてきたが、特に俺には害もなかったから、ウサギに全員蹴り倒させはしたが1人も殺さずに頭っぽいやつだけ近くの町に差し出した。


どうせ完全に潰しても盗賊はすぐに湧くらしいから、残りは気絶させたまま放置した。


山と町の往復はめんどうだったが、そっちで合計銀貨数十枚儲けたから、合わせて金貨10枚ちょっと。まぁ暇が潰れてこの稼ぎなら十分だろう。


ウサギも嬉々としてやってるし、機嫌も良くなったみたいだしな。


そろそろアリアたちはクローノストとカゲロアの国境に着く頃だから一度戻らなきゃな。





「…お帰りなさい。」


イーラに乗ってアリアたちと合流したのだが、なぜか国境がギリギリ視界に入るくらいの位置でアリアたちは止まっていた。


「ただいま。というかなんでここに止まってんだ?」


「…私たちは来るときは空から来たため国境を通っていません。帰りはどうするべきかの判断を仰ぐのを忘れていたため、ここで待機していました。」


「国境は往復で通らないと行けないとか決まりがあるのか?」


「…通った人間の記録を残しているかはわかりませんが、そういった決まりはありません。ですが、リキ様はリキ様自身が思っているより有名です。だからアラフミナにいるはずのリキ様がクローノストから出て来ることに疑問を持たれる可能性があります。」


そういうことか。

疑問を持たれたくらいじゃすぐにイーラのことがバレるわけじゃないが、潰せる可能性は潰しておくべきだよな。


「ならまた空からといいたいが、ガキどもにもまだイーラの変身は見せたくない。何か他に方法はないか?」


「…森の中を通れば大丈夫です。それなら通り道で盗賊の討伐も出来ます。ただ、魔物などの危険もありますのでサーシャに眷属での戦闘の許可を与えてもいいですか?」


「それはかまわないが、それだけでいいのか?」


「…はい。その許可さえいただければ、不意打ちされる可能性が減るので、あとは通常戦闘で問題ないと思います。」


あぁ、戦闘の許可というより、ガキどもの前でどこまで見せていいかの確認だったのか。

まぁサーシャが吸血鬼だってのはクローノストの門番にバレてるだろうから問題ない。実際はあの水晶でどこまで見られたかはわからないんだけどな。


「俺がいないときの判断はアリアに任せる。危険だったら後のことは気にせずに全力で戦え。」


「…はい。」



アリアと地図を見ながら、森の中の進み方を決めた。

それにしてもいつのまに地図なんて用意していたんだ?飛んで行くのはアリアの提案だったはずだし、空を行くのにこんなに細かい地図は必要ないはずだ。

この地図はやけに手作り感があるから安かったとかか?だから念のため買っておいたとか?

まぁべつにいいか。


「じゃあ俺らが先を走って道を作るから、その道を通って来てくれ。方向がズレてたら大声で呼んでくれ。そしたらたぶんセリナが声を拾うだろうから、急いで戻る。」


「…はい。」



俺らは国境から見えなくなる位置まで移動してから、国境の横を通る森の中へと先に入った。







思った以上に道を作るのって辛いな…。


イグ車が通れる幅の道を作るためにはどうしても木々をどうにかしなければいけない。


根元付近で切ればいいのだが、いくらセリナでもそんな簡単に出来ることではない。


だから今はイーラを人型に戻し、イーラとセリナに前を走らせながら木々を切らせて、後ろを俺とウサギが追いかけながら、切り残しを俺は殴って、ウサギは蹴って粉砕している。


かなりの力技だからPPの消費が激しい。

でもイーラの特製汁なんか飲みたくねぇから調整しながら進んでいる。


最初、ウサギは切り残しの粉砕を出来ないだろうと判断し、俺が全部を受け持っていた。毎回会心の一撃を使ってな。

だけどこれは疲れるし、効率が悪すぎる。

だから今度はイーラも粉砕側をやらせた。

そしたらそこそこ順調に進むようになった。


そんで暇になったウサギは道から一つ外れた木を蹴っていた。

何がしたいのかわからなかったが、木を折ることができてなかったし、無理してるのか足が赤くなってた。


だからイーラにウサギの靴を作らせた。

中はスライム、外は龍鱗の膝下まである特別製だ。


これで怪我はしないで済むだろうくらいのつもりで作らせたのだが、しばらくしたらウサギが木を蹴りで折れるようになった。


折るたんびにこっちをチラ見してきてたから、慣れてきたみたいだなくらいに思ってた。

またしばらくして、折った後の木にかかと落としをして粉砕させたときにはドヤ顔でこっちを見てきた。


どうやら自分も参加したいアピールだったらしい。

セリナにそれを耳打ちされるまでわからなかった。

今思えば気づかない俺もどうかしてたが、それだけ疲れていたのだろう。


というか手伝いたいなら手伝いたいってハッキリいえよ。めんどくせぇな。


まぁそういうめんどうなこともあったが、なんとか今の形となった。


最初に時間のロスはあったが、駿足の加護を持つ俺とセリナ、化け物イーラ、脚力のあるウサギ。この4人でほぼノンストップで走りながらの作業だからか、いまだにアリアたちには追いつかれてはいない。


粉砕した木々は道端に放置だが、切り取った木々は何かに使えそうだから、イーラに保存させてある。


まぁ順調だ。

もう既に半分以上は進んでいるだろう。

だけど、正直もうしんどい…。


このまま仰向けで大の字に寝転がりたい。


でもイーラは別としてもセリナとウサギがまだ大丈夫そうなのに俺が限界だっていうのは主のプライドが許してくれない。そのプライドの中には最年長の男だってのも少しは含まれてそうだが。


だから既に残りのPPが3分の1を切っているのだが作業を続けている。


アリアがいれば黙ってパワーリカバリーをかけてくれるんだがな。

まぁそれで保たれるプライドってなんなんだって感じだが。


「そこの者、止まれ!それ以上進むな。」


どうやって休憩を切り出そうかと考えていると、不意に声が聞こえた。

その声に反応したのか、セリナとイーラが足を止めて、俺の方を振り向いた。


束の間の休息だな。


俺らが止まると、目の前に顔を隠したやつが現れた。

目もとだけ見えるが、右目側に火傷の跡がある。それを隠すためか?それとも単なる素性を隠すため?


なんかその顔を隠してる布も含めて服装が忍者っぽいな。


声はしゃがれているし、見た目も目もとしか見れないうえに、ゆったりした服装のせいで胸での判断も出来ねぇから、男か女かわからねぇ。というか、人族かもわからねぇな。


「なんでお前に指図されなきゃならねぇんだ?」


「これは命令ではなく忠告だ。ここより先はお頭の領域。死にたくなければ引き返せ。」


忍者の里か?

そうなら興味があるな。


「そうか。忠告ありがとな。だが、この道を通るって決めたんだ。今さらお前に何かをいわれた程度で変えるつもりはねぇ。まぁ本当に死にそうになったら引き返すけどな。」


「なら好きにしろ。ただし、貴様1人で行け。子どもを巻き込むな。」


何いってんだ?こいつは。


「ここにこいつらを残して大丈夫だという保証がねぇから連れて行くに決まってんだろ。」


「その娘らの命の保証は私がしよう。」


どうやらこいつは馬鹿みたいだな。


「知らねえやつに仲間の命を預けるわけがねぇだろ?」


「…それもそうだな。好きにしろ。」


忍者のようなやつはそういい残し、姿を消した。

現れたときもそうだったが、どうやってんだ?

影に潜ったとかではない。いきなり現れていきなり消えた。

たぶんスキルなのだろうが、そんなスキルがあれば俺らを殺すことも出来ただろう。でも忠告しただけで消えるとか不思議なやつだ。

そんなやつが忠告するほどの強者がこの先にいるのか。

確かに引き返すのも一つの手だな。


「セリナ。この先はどうだ?」


「よくわからにゃい。」


…ん?


「どういう意味だ?」


「この先からはにゃにも感じにゃい。」


何も感じない程度なら平気だろう。


念のため俺が先頭に立って、さっきの忍者風のやつが立っていたところより先の領域とやらに足を踏み入れ…………後悔した。


なんだこの寒気は?全身鳥肌が立ってやがる。


俺に続いてきたセリナとウサギも目を見開いて警戒を強めた。


イーラはいつも通りだ。

こいつの危険センサーはぶっ壊れてるからしゃーない。



「久しぶりの客人は4分の3が可愛い娘じゃないか。続けて可愛い女の子が手に入るなんて幸運だな。」


長い髪を後ろで軽く纏め、上半身裸に緩めのカーゴパンツのようなものをはいた男が歩いてきた。


男の上半身には右肩から左の脇腹まで大きな傷があり、体には複数箇所に血がついている。

ただ、こいつの傷は完全に塞がっている古傷だ。この世界で古傷を作るってことはポーションを買う金も治癒の魔法もないやつか、あえて残してるってことか。こいつはたぶん後者だろう。


あと、こいつの血は全部返り血だろう。古傷以外の傷が見当たらねぇからな。


何かと戦ってる最中だったのか?

いや、もっと不快な何かな気がして仕方がねぇ。


「君はいらないね。」


気づくと男が目の前にいて、ナイフを振り下ろしてきた。

それをガントレットで受け流すと、視界に不快なものが入った。


…こいつ勃ってやがる。


不快すぎて膝蹴りで折ってやろうとしたら、男は後ろに跳んで避けた。


「そこを狙うのは反則じゃないかな?これは君たちが行為の最中に領域に侵入してきたせいなんだからさ。」


行為中になんでこいつは血まみれになってんだ?…まぁある程度の想像はつくけどな。


ここは忍者の里ってわけではなく、盗賊の住処だったわけか。


ならとりあえずこいつは殺すか。

こいつは間違いなく害悪だ。



残り少ないPPのことなど気にせず、一歩で懐に入って右拳を振り切ったが、紙一重でかわされた。


「なんか本気を出されちゃったね。めんどくさいなぁ。」


しゃべる余裕があるとか腹立つな。


後ろ回し蹴りで男の顔面を狙うと、ナイフでガードされそうになり、咄嗟に避ける。


俺は足には防具をつけてねぇからな。

あのまま蹴ったらザックリだ。


「ふーん。あの体勢から蹴りを引っ込められるのか。君は冒険者ランクでいうところのBランクくらいかな?」


もう一度一歩で懐に入り、左拳を出すと避けられたから、そのまま左手を男の動きに合わせて男の無駄に長い髪を掴んで引っ張り、バランスを崩した男を右拳で殴って吹っ飛ばした。


本気の一撃を与えたつもりだったが、うまく衝撃を逃がされたっぽいな。


「違うな。君はAランクだね。でもそれじゃあ俺様は倒せないよ。俺様の異名は知ってるだろ?」


木にぶつかって止まった男がダメージなどないかのようにズボンについた汚れを払って話を続けた。


「いや、知らねぇよ。」





…………………。





「俺様は巷ではAランクハンターと呼ばれてるんだよ。だからAランク程度の君では俺様には勝てないんだよ。それとも実はその程度の実力でSランクだったりするのかい?」


こいつの喋り方はなかなかイライラするな。


「あっそ。ならFランクの俺なんかに負けたら恥ずかしいな。」


今度は男の懐ではなく、一歩で横を通り過ぎながら、短剣を抜いて浅く切り、振り向きながら突き刺しにかかったが、二撃目は避けられた。

浅い傷は与えられたが、もし俺がガントレットをしてなければカウンターで両腕をズタズタに切られていただろう。


余裕をかますだけあってなかなか強いな。


「君のガントレットは硬いなぁ。予想以上に君の動きが速くて脇腹を切られちゃったお返しに君の腕を切り刻もうと思ったのに、そのガントレットは傷すらつかないんだね。」


まぁ別に殴り殺す必要はないんだよな。

ムカつくからそうしたかっただけで、相手の土俵で戦う必要もねぇしな。


『上級魔法:磁力』


右手で男を引っ張ると予想外だったのか驚いた顔をして簡単にバランスを崩した。

その隙を逃さないように左手の人差し指を男に向ける。


『上級魔法:電』


人差し指の先から直線に電撃が走るが、男の心臓からは少しずれたようで、男の右肩あたりの肌が黒くなった。


感電しただろうにまだ意識があるようで、男は倒れかかった体を右足を地面につけて踏ん張った。


俺はまた一歩で懐に入るために飛び込む。

男は俺が近づいたことに気づいて、ナイフを握る手に力が入ったのが見えた。


その状態で反応するってのはさすがだな。


『上級魔法:泥』


男が踏ん張っていた右足の地面を泥に変えると男は完全にバランスを崩し、左足を前に出そうとしてるが、どうにもならずに前に倒れてきている。


俺は飛び込んだ勢いを乗せて、倒れこんできた男の顔面を躊躇なく本気でぶん殴った。


男は避けれないのを悟り、なんとか両腕をクロスさせてガードしたが、踏ん張ることが出来ずに吹っ飛んだ。



錐揉みしながら10メートルくらい先で止まった男の両腕はへし折れ、顔面も陥没しているようだ。


それでも生きてるんだからタフだな。


というかさっきのやつはこいつをお頭と呼んでおいて助けに来ないんだな。


俺はゆっくり歩いて男に近づく。


「おまえは、そんな見た目で魔法使いなのかよ。」


陥没した顔なのに器用に喋るな。

戦闘中もだが、こんな状態になってまで喋るんだからよっぽど人と話すのが好きなのかね。

まぁ余裕がなくなったからか口調は変わってるけどな。


「俺は冒険者だ。さて、俺は優しいから最後に選択肢をやる。生きたまま食われるのと殴り殺されてから食われるの。どっちがいい?」


「ハハッ。どこが優しいんだよ。どっちも最悪じゃねぇか。それにしても人を食うとか俺様以上の変態だな君は。そんな最後も俺様にはお似合いかもな。」


食うのは俺じゃねぇけど、死に行くやつに勘違いされてもどうでもいいか。

口調も戻ったし、吹っ切れたのか?

まぁ楽に殺してやるつもりはねぇから諦めろ。


「さぁ、召し上がれ。」


男は大の字に寝て目を閉じた。


「イーラ。時間をかけて食ってやれ。俺は奥に生きてるかはわからんが、たぶん負傷者がいると思うから見てくる。セリナとウサギはこいつの仲間が来ないかをここで警戒しててくれ。」


「「「はい。」」」


イーラは犬型だと喋れないようで、念話を飛ばしてきた。


俺は男を無視して少し奥へと歩くと地下に続いてるっぽい階段があったから、一瞬だけ迷って下りた。


後ろからはゴリゴリと骨が噛み砕かれるような音と男の絶叫が聞こえるが、自業自得だ。

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