第89話



俺がテーブルに着くと、アリアは対面に座った。


「早速だが、アラフミナ以外の国に行くとしたらどこがいい?ちなみに俺が地図を持っているのはケモーナとカテヒムロとクルムナだ。」


地図を買ったはいいが、俺はどんな国かも知らないからな。


「…リキ様は仲間を集めようとしているようなので、クルムナかガンザーラをお勧めします。」


ガンザーラ?聞いたことすらない。


「なぜその国なんだ?ガンザーラの地図は持ってないぞ?」


「…地図は国に入ったあとに村や町にある冒険者ギルドで手に入るので、前のように事前に計画して何かをしなければならないわけでなければ問題ありません。」


確かにケモーナのときは時間をかけずに終わらせるために事前に地図が必要だっただけだしな。


「…その2つの国を推す理由ですが、わたしたちのパーティーには遠距離攻撃出来る方が少なすぎます。クルムナは鍛冶師が豊富な国で、弓や投擲具などの飛び道具も広く扱っています。なので他の国よりは使用者がいる可能性は高いと思います。ガンザーラは魔法の国といわれるほど、魔法使いばかりいる国です。魔法を使えないものが入国すると差別されたり奴隷狩りにあったりするほど、魔法が使えて当然であり、魔法が使えないものはどうなっても文句はいえないという暗黙の了解があるほどの国です。」


鍛冶師の国は違うときに行きてぇな。

おっさんには悪いが自分の村にも鍛冶師はいて欲しいし。


だけど今回はすぐに使える奴隷が欲しいから、行くならガンザーラか。


クルムナは飛び道具を使える奴隷がいない可能性もあるからな。


魔法の国なら1人くらいは魔法が使える奴隷がいるだろう。


「じゃあ今回はガンザーラに行こうと思う。ガンザーラはアラフミナに近いのか?」


「…隣国なので、北に向かえば国境があります。」


「なら、ガンザーラで決定だ。」


「…はい。」


「あと、アリアなら気づいてると思うが、仲間が増えたからパーティー分けをしようと思う。」


「………はい。」


ん?いつもより間が長かったな。


「その分けたパーティーのリーダーをアリアにやってもらいたいと思う。」


「…セリナさんの方が適任では?」


確かにセリナは面倒見がいいが、頭が良くないからな。

それに仲間を護るというのにも向いてない気がするから今のメンツのリーダーを任せるのは少し怖い。


「俺が仲間に求めるのは強さもあるが1番は死なないことだ。だから支援、回復に特化してるアリアが適任だと俺は思ってる。頭もいいしな。」


「………ありがとうございます。」


「べつにパーティーを分けたからって別行動をするわけじゃないからそんなに嫌がるな。ただ仲間が6人を超えたから、パーティー分けをしてチーム編成するだけの話だ。その分けたパーティーのリーダーを頼んでるだけで、基本的な指示はいつも通り俺が出すからそこまで変わらない。それでも嫌か?」


アリアが慌てた顔をした。


「…いえ、リキ様に選んでもらえたのは嬉しいです。ただ、リキ様と一緒が良かったと思ってしまって、失礼な態度を取ってしまいました。ごめんなさい。この話、喜んで受けたいと思います。」


「なら良かった。それじゃあパーティー分けなんだが、俺のパーティーは俺、イーラ、テンコ、サラでアリアのパーティーがアリア、セリナ、カレン、アオイで行こうと思っているんだがいいか?」


「…それではリキ様の負担が大きいのでは?」


確かに戦闘できるのかわからない新人2人が俺側だからな。

でもそのくらいの負担は主の俺が背負うべきだろう。


「大丈夫だ。それにテンコはレベルとかないし、パーティー登録もできないみたいだから、実質面倒を見るのはサラだけだ。」


「…そういえばテンコさんは精霊でしたね。かしこまりました。そのパーティー分けでお願いします。」


「じゃあ、パーティー編成は全員が帰ってきたら行おう。」


「…はい。」


アイテムボックスから以心伝心のブレスレットを取り出してアリアに渡す。


「もしかしたら別行動になる場合もあるかもしれねぇから、これはアリアに渡しておく。MPを込めれば念話ができる。それと、このあと騎士が以心伝心の指輪を持ってくるらしいから、それもアリアが付けろ。そして、第三王女との連絡は任せた。」


「…はい。」


「あとはそうだな…。今後の予定は明日はおっさんのとこの武器防具屋に顔を出したあとに奴隷市場でもう一度新しい奴隷がいないかの確認をとって、おっちゃんにも挨拶しとかねぇとな。夜はオークションに顔を出すつもりなんだが、アリアもくるか?」


奴隷商からもらった招待状をアリアに渡す。

俺は文字が読めないから、1人だと心配だからな。


「…はい。あと、できれば薬屋にも寄ってはもらえないでしょうか?」


「べつにかまわないが、なんかあるのか?」


「…念のため薬を揃えておきたいだけです。」


イーラがMPとかを回復できるから必要ないだろうといおうと思ったが、備えておいて損はないからな。


「わかった。ちなみに奴隷商の招待状にはなんて書いてあるんだ?」


ぶっちゃけ内容は読めてないから、そういうオークションは夜だろうと勝手に決めつけ、連れも1人くらいは大丈夫だろうと思って話を進めていたが、違ったら考え直さないとならないからな。


「…日没とともに始まり、この招待状で入場できるのは2人までのようです。入場の際に金貨1枚を受付に預けるようです。あとはいくつかのルールが書いてあるだけです。」


アリアがルールを読み上げるが、奴隷商がいってたことや普通のオークションのルールと同じようなことだけだった。


俺が気をつけるのは金の単位が銀貨ってくらいか。


買いたいものがあったら札を上げて銀貨何枚かをいう。100枚超えても単位は銀貨か。


アリアがいれば種族の得意なものとかも知ってそうだしな。


一通り話が終わった頃に扉がノックされた。


開けると宿主がいて、騎士から預かったという指輪を渡された。

その際に3人部屋と4人部屋の空きができたから移ってくれといわれて、移ることになった。


ちょうどいいからさっきのパーティーと同じ部屋分けにしたのだが、アリアはちょっと不満そうだった。まぁ文句はいってこなかったがな。




「アリア。ありがとな。それじゃああとは自由時間にしてくれ。出かけるなら部屋の鍵は預かっておくぞ?」


「…ありがとうございます。でも、部屋で本を読んでいるので大丈夫です。」


「わかった。じゃあ全員そろったら俺の部屋に集合だ。」


「…はい。」


互いに用意された部屋に入った。


暇だし俺はもうひと眠りするかな。


1番窓際のベッドにダイブして、目を閉じた。

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