第67話



ケニメイトは上下分かれている防具だったから、下だけ着替えさせた。


防御力のない普通のズボンだろうが、戦わせるつもりはないから大丈夫だろう。


汚れた手はまだまだ大量に残ってる川の水で洗わせた。


ここまでしてもニータートは襲ってこなかった。

襲ってこない魔物を狩るってのもなんか微妙な感じだな。

まぁなんだかんだいっても最終的には狩るんだがな。こいつの血は金になりそうだし。


「そういやイーラって体内に収納できるみたいなことをいってた気がするが、生物なまものとかも保存できんのか?」


「もちろん!頭以外ならなんでも状態維持したまま保存できるよ!凄いでしょ!」


「それは本当に凄いな。」


頭をすり寄せてきたから撫でてやる。


「エヘヘ〜。」


「じゃあ、ここにいる亀の生き血を全部保存しといてくれ。甲羅は3つくらい残して、あとは全部食べていいぞ。」


「は〜い。」


イーラは両手の指を針のように変化させて、一番近い亀に飛び乗った。


全く反応しない亀の首筋に両手を突き刺すと、亀が暴れる間もなく干からびた。


怖っ!


干からびた亀を放置して、次々とミイラを作成していく。

全ての亀をミイラに変えた後、今度は手を振って細い蜘蛛の糸のようなものを飛ばして、亀を絡めて吸収した。


もうイーラはなんでもありだな。


久しぶりに進化許可申請がきたが、もちろん許可だ。


イーラの種族を確認すると"大食変異スライム"になっていた。


たしかに大食だからな。


どうせたいした変化もないだろうから、確認はしなくていいか。




イーラは俺の指示通り3つだけ甲羅を残して、他は綺麗に捕食したようだ。


いや、ケニメイトが隠れていた甲羅とその近くにあったトイレにしてたっぽい甲羅も捕食しなかったようだから、全部で5つ残っている。

さすがにイーラもなんでも食べるわけではないようだな。


残った甲羅のうち汚い2つは放置して、3つはアイテムボックスに入れた。

そんで1人じゃ立てないケニメイトを脇に抱えてアリアたちの元に戻った。


「待たせたな。」


「…無事に見つけられて良かったです。」


「だいぶ弱ってるみたいだから、自分で歩けるくらいに治してやれ。」


「イーラの薬をちゃんと飲んでればもう治ってるのに!」


イーラがブーブーいってるが、いきなり飲まされたのが魔物の何かだといわれりゃ吐き出すだろ。魔物を生のまま食べてるイーラにはわからない感覚だろうがな。


ん?前にイーラに飲まされた疲労が回復する液体も魔物の何かなのか?

思い出したら気持ち悪くなってきた。


セリナがイーラの頭を撫でてなだめている。

さすが年長者だな。

いや、今は年長者じゃなかったな。ステータス表記的にも精神的にも年長者はアオイだったわ。

精神年齢だったらむしろおばさんだろうしな。



『リビタライズ』


『ハイヒーリング』


『フェルトリカバリー』




さすがアリアというべきか、ケニメイトは普通に戦えるだろう状態まで治ったようだ。


「それじゃあ、アイン。こいつはそっちのパーティーに入れてくれ。」


俺は一時といえど、奴隷以外をパーティーにするつもりはないしな。

それに俺のパーティーは既に定員オーバーだ。

本当なら奴隷以外を連れていたくもないが、今日に限ってはこんだけチームとして他者と共闘してるのだから、もう1人増えたところで変わらないし、諦めている。


「かしこまりました。」


「ローウィンス様!?え!?あの、よ、よろしくお願いいたします。」


ケニメイトはスカートではなくパンツスタイルだが、太ももあたりの生地を軽く摘んで足を交差させて姿勢を低くして、深く腰を折って挨拶をした。


「はい。よろしくお願いしますわ。ケニメイトさん。」


それに対して第三王女は微笑んだだけだった。


まだ名前を伝えていないのに知ってるってことはもともとの知り合いみたいだな。


なら放置でいいや。

危なければ第三王女の護衛がなんとかするだろう。




けっきょくこの階の魔物とは戦っていないが、ほぼ一周したのに見かけないってことはまだ新しく生まれていないのだろう。


仕方ないから次に進むとしよう。

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